2019年3月10日、フランス沖のビスケー湾で自動車運搬船兼コンテナ船Grande America(グランデ・アメリカ)が火災を起こし沈没する事故が発生しました。積載されていた危険物や油の流出により、深刻な環境問題を引き起こしました。
本記事では、Grande Americaの事故の概要、原因、影響、同様の事故を防ぐための対策について解説します。
Grande America事故の概要
Grande Americaは、全長214m、積載能力1,300台の自動車と365TEUのコンテナを運ぶ貨物船で、イタリアのGrimaldi Linesが運航していました。
事故は2019年3月10日、ドイツのハンブルク港からモロッコのカサブランカ港へ向かう途中で発生。船のコンテナデッキで火災が発生し、乗組員は消火を試みましたが、火の勢いは制御不能に。翌日3月12日には、船はバランスを崩して横転し、そのまま沈没しました。
沈没地点はフランスのラ・ロシェル沖のビスケー湾。乗組員27名はイギリス海軍のHMSアーガイルの支援により全員救助されましたが、船と積載貨物はすべて失われました。

2,210台の自動車と365個のコンテナを輸送 45個のコンテナに危険物が含まれており、その内訳(塩酸10トン、硫酸70トン)です!
Grande America事故の原因
この事故の正式な調査報告はまだ完全には公表されていませんが、火災の主な原因には、以下の点が指摘されています。
1. 危険物貨物の発火
Grande Americaには、燃えやすい化学品や可燃性液体が積載されていたことが確認されています。事故当時、火災が発生したのはコンテナデッキ部分で、危険物貨物の自己発火が原因と考えられています。
2. 火災対策の限界
船には消火設備が設置されていましたが、コンテナの間で燃え広がった火災を効果的に抑えることはできませんでした。特に、消火システムが船の規模や貨物の種類に対して十分ではなかった可能性があります。
3. 乗組員の初動対応の遅れ
火災発生後、乗組員は、できる限りの対応を行いましたが、火の勢いが強く、船全体に広がるのが早かったため、適切な対応ができなかったとされています。
事故がもたらした影響
Grande Americaの火災・沈没事故は、特に環境問題と物流業界に大きな影響を与えました。
1. 海洋汚染の深刻化
船が沈没したことにより、積載されていた約2,200トンの重油と、化学物質を含む貨物が海へ流出。フランス沿岸に大規模な油の漂着が確認され、環境保護団体や政府が緊急対策を実施しました。
2. 荷主への損害
事故により、積載されていた自動車やコンテナがすべて失われました。海上貨物保険の適用範囲や補償問題についても議論が発生しました。
3. 危険物輸送の規制強化
この事故を受けて、EUでは危険物の輸送基準が見直され、積載方法や安全対策の強化が求められるようになりました。特に、化学品や可燃性貨物の取り扱い基準が厳格化されました。
この事故から学ぶべきポイント
Grande Americaの事故は、危険物輸送の管理と火災対応の重要性がわかります。今後同様の事故を防ぐためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
1. 危険物の積載管理を徹底する
海運会社や荷主は、危険物貨物の分類と管理を徹底し、適切な積載方法を守ることが重要です。特に、可燃性のある化学品は分散して積載し、火災が広がりにくい配置にすることが重要です。
2. 火災検知と消火設備の強化
火災の早期発見と迅速な対応が不可欠です。高感度の火災検知センサーの導入や、コンテナ内部の冷却システムの強化が求められます。
3. 環境リスクを考慮した貨物管理
油や化学品などの有害物質が海に流出すると、環境に深刻な影響を与えるため、適切な梱包と管理が必要です。また、海上保険の適用範囲を確認し、万が一のリスクに備えることも重要です。
まとめ
- Grande Americaの事故:コンテナデッキの火災が原因で沈没
- 主な原因:危険物貨物の発火、消火設備の限界、初動対応の遅れ。
- 影響:海洋汚染、貨物の損失、危険物輸送規制の強化が発生。
- リスク対策:危険物の適切な管理、火災検知と消火システムの改善、環境リスクへの対策。
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