国際輸送119 学習コース

第6回:スペイン輸送|混載便とトラック配送でコストと納期を両立する実務ガイド

スペイン輸送|南欧混載便とトラック配送の効率化

国際輸送ノウハウ ヨーロッパ版

南欧輸送が”特殊対応”と呼ばれる理由

スペインはEUの地理的最西端に位置し、欧州内でもリードタイムが伸びやすい「端点」の物流エリアです。

オランダやドイツのハブ港(ロッテルダム/アントワープ/ハンブルク等)で一括通関・再通関を行い、南欧へ陸送で中継するケースが多く、直行よりもネットワーク設計が複雑になりがちです。

特に小口貨物では混載便(Groupage)が主流で、最終区間はトラック配送が中心となります。

本記事では、南欧混載・トラック中継・コスト最適化を実務目線で整理します。

南欧輸送で起こりやすい実務トラブルと対策

スペイン向け輸送では、地理的な距離と複雑な中継経路により、特有のトラブルが発生しやすくなっています。ここでは代表的な事例と対策を紹介します。

1. 遅延・破損・書類ミスの具体例

事例1:ETA遅延
  • ロッテルダム→マドリード間の陸送で国境通過時に運転時間制限(EU Reg.561/2006)により遅延が発生。
  • 対策:週末走行制限カレンダーを事前共有し、フォワーダーがETA再計算を毎週実施する。
事例2:書類不整合
  • T1とC88のMRNが一致せず、再通関で貨物が一時保留される。
  • 対策:Track&Traceで書類紐付けを自動管理し、誤転記を防止する。
事例3:貨物破損
  • 混載便積替え時に箱潰れが発生。
  • 対策:フォワーダーに写真報告+即時保険連絡を義務化。再梱包対応を現地代理人が行う体制を整備する。

2. 通関・検査遅延時の対応フロー

通関や検査で貨物が保留された際には、以下のフローで対応します。

  • 現地通関士(Agente Doganal)へ即時連絡:保留原因を確認し、必要書類の再提出や補正を行う
  • フォワーダー内の危機連絡網発動:輸出者・現地倉庫・配送先へ影響予測を共有
  • 保険連携:検査により保管延長が発生した場合、保険証券のDelay条項に基づき請求手続きを進行
  • 再通関支援:誤記や書類不備の場合は、再申告書(C88修正版)を通関士が即時提出

スペイン輸送の効率化に向けた3つの戦略

スペイン向け輸送を効率化するには、以下の3つの戦略を組み合わせることが重要です。

1.ハブ港+陸送モデルの最適化

ハブで一括通関

ロッテルダム/アントワープ等のハブで輸入申告→T1で保税移動し、スペイン側で再通関(最終国でC88)を行います。

混載ネットワークを活用

ハブで南欧向けGroupageを編成します。中継拠点の固定化(北スペイン=ビルバオ/イレオナ、東部=バルセロナ、中央=マドリード)により、遅延を平準化できます。

内陸輸送の組み合わせ

区間によりバージ(内陸水路)や短距離鉄道も選択肢に入れ、CO₂とコストの両立を目指します。

2.トラック配送で差が出る”前倒し管理”

トラック配送では、細かな調整が輸送効率を左右します。

ETAの上流共有

船社・航空会社のスケジュール変動をフォワーダーと共有し、到着前に配車を確定します。

現地パートナーと時間帯調整

都市圏(マドリード/バルセロナ)は交通規制・荷受制限に留意が必要です。予約制デポでの積替え時間を確保しましょう。

高温期対策(6〜9月)

温度管理が必要な食品・部材は保冷輸送/夜間配送を前提に計画します。

3.ETA可視化と通関連携のデジタル化

デジタル化により、情報共有と書類管理の精度が飛躍的に向上します。

Track&Traceを標準化する

GPS共有・ステータス配信(集荷→通関→積替→配達)をマイルストーン管理し、遅延アラートを活用します。

書類の前倒し電子化

NACCS→欧州側NCTS/ICS2連携により、MRN・T1・C88等のキー番号を案件単位で紐付け、再通関時の照合ミスをゼロにします。

SLAの明文化

混載→再通関→ラストワンマイルの各KPIを定義し、可視化レポートでPDCAを回します。

制度・データの基礎知識(実務メモ)

スペイン輸送の実務を理解するうえで、押さえておくべき基礎知識をまとめます。

Groupage(混載便)

  • 複数荷主の小口貨物を同一車両で輸送
  • コスト効率は高いが、積替え増によるリスクに注意

FTL(Full Truck Load)

  • 専用便。納期厳守・破損回避に強み。物量や納期要件次第で使い分け
  • 主要港/拠点:海上=バレンシア、バルセロナ、アルヘシラス。内陸拠点=マドリード、サラゴサ、ビルバオ等

EUトラック運行規制

  • EU規則561/2006に基づく運転・休憩義務。国・地域ごとの週末・祝日走行制限に留意
  • 通関手続:最初の入国地でT1発行→最終国でC88申告。MRNの整合性検証を徹底

法規制・地域特性と特殊通関対応

スペインの主要港では、それぞれ異なる検査基準と手続きがあります。

バレンシア港

  • 食品貨物の衛生検査(Sanidad Exterior)が厳しい。
  • 成分証明・輸送温度ログの提出を求められます。

バルセロナ港

  • アパレル・電子機器など高付加価値貨物が多い。
  • セキュリティ検査(S2レベル)を実施しています。

アルヘシラス港

アフリカ航路の中継港です。原産地証明(REX)とEPA申請書類の一致が重視されます。

各港で検査水準や書類様式が異なるため、事前に港湾別通関マニュアルを参照することが望ましいでしょう。

貨物破損・遅延時の保険請求フロー

トラブル発生時には、以下のフローで保険請求を進めます。

  • 破損発見時に即時写真撮影・報告(48時間以内)
  • 現地フォワーダーがDamage Reportを作成し保険会社へ送付
  • 査定・賠償処理:CIF価格を基準に算定。Delay損害は別途契約条項で補償
  • 再輸送・代替手配:損害確定後、フォワーダーが再発送または再梱包手配

この手順を社内マニュアルに反映することで、トラブル時の対応速度を高められます。

実務チェックリストとフォワーダー選定条件

最後に、スペイン輸送を成功させるための実務チェックリストをまとめます。

輸送設計のチェックポイント

  • 混載はハブでまとめる:ハブ港で一括通関・編成し、南欧向けに集約
  • T1・MRN・C88の番号管理:再通関の照合ミスを防止。書類は電子で一元保管
  • トラック運行制限を考慮:休憩義務・規制日・気象を織り込んだETA設計
  • 温度管理の要否を判断:夏季は保冷・夜間配送を前提に見積もり取得

フォワーダー選定の条件

理想的なフォワーダーは、以下の条件を満たしています。

  • 南欧(スペイン/ポルトガル)現地ネットワーク
  • Track&Trace提供
  • NCTS/ICS2対応
  • 再通関実績

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