オフィシャルフォワーダーとは
展示会や国際見本市の主催者が指定する公式物流業者を「オフィシャルフォワーダー」と呼びます。会場内での貨物搬入・搬出、現地通関、再梱包、一時保管などを一括で担い、出展者がスケジュールどおりに設営・撤去できるよう支援します。
通常のフォワーダーとの違いは?
作業範囲の違い
オフィシャルは、会場内への搬入・搬出やブース直下までのハンドリングができます。通常フォワーダーは、会場外までの輸送が中心で、会場内作業は原則できません。
主催者指定の有無
オフィシャルは主催者が正式に指定し、出展案内やExhibitor Manualに明記されます。通常フォワーダーは出展者が自由に選べますが、会場規則により立ち入りが制限されることがあります。
コストと柔軟性
オフィシャルは料金が高めでも展示会特有の短納期・会場ルールに適合します。通常フォワーダーは、安価なことが多い一方、会場内作業は別契約が必要になる事があります。
オンサイト・オフィシャルとオフサイト・サービスプロバイダーの区別
オンサイト・オフィシャル
会場内の搬入・搬出、ブースへの直配送、空箱保管、会期中の緊急対応を担当します。会場によってはオンサイト以外の業者はフォークリフト作業や場内移動ができません。
オフサイト・サービスプロバイダー(推奨フォワーダー)
海外から現地港・空港までの国際輸送、通関、会場近隣の倉庫運用などを担当します。主催者が推奨として掲載することがあり、オンサイトと連携してスムーズな受け渡しを行います。
よくある利用モデル
海外出荷を通常フォワーダーで手配 → 現地港で通関 → 会場内への最終搬入はオンサイト・オフィシャルが担当、という分業が一般的です。
必須利用か任意利用か?
会場規則によっては、会場内ハンドリングはオフィシャルのみ、またはオンサイト指定業者のみと定められています。特に米国展示会では「Drayage(Material Handling)」と呼ばれるサービスがあり、オフィシャル以外には絶対に依頼できません。
国や会場により規制の厳しさは異なります。米国は特に厳格で必須範囲が広く、欧州やアジアでは比較的柔軟な場合もあります。
国際輸送部分(日本側の集荷や海上・航空輸送、現地港到着まで)は任意選択が認められることが多く、通常フォワーダーと組み合わせてコストを抑える運用も可能です。

Exhibitor Manualの Logistics/Shipping/Material Handling の章を確認 → 会場内作業の必須対象範囲を把握 → 国際輸送部分は相見積りで検討、の順で決めると安全です。
費用の内訳の考え方(概念)
ハンドリングチャージ
会場内での荷役・移動に対する費用で、重量または容積、最小課金単位で算出されます。
アドバンスウェアハウス費用
会期前に会場指定倉庫で一時保管する費用です。混雑回避や設営日程の前倒しに有効です。
空箱保管費用
展示期間中に梱包材や空箱を会場外で保管・返却する費用です。
労務・機材費
フォークリフト、クレーン、作業員手配、時間外・休日割増などが含まれます。
書類作成・通関関連費
通関手数料、ドキュメント作成費、カルネ取扱料、検査立会い費などが発生します。
サーチャージ・追加費用
締切超過、予約変更、待機料、再配達、危険品追加、梱包や梱包材購入などが該当します。
保険と免責条件
- 展示貨物は破損や遅延のリスクが高いため、輸送保険や展示会専用保険の加入が必須です。
- 保険契約では「展示中」「輸送中」「搬入搬出中」の適用範囲を必ず確認します。
- 免責条件として「梱包不備」「不可抗力(天災・ストライキ)」「主催者規則違反」などが含まれるため、契約前に把握しておく必要があります。
ATA CarnetとTemporary Importの違い
ATA Carnet
加盟国間で通用する「通関パスポート」。一冊で複数回出入国が可能。展示品に多用されるが加盟国に限られる。
Temporary Import(仮輸入制度)
各国の税関制度に基づき、関税・税金を免除または担保金預託で一時輸入する方式。非加盟国やカルネ対象外貨物ではこちらを利用。

実務上は、加盟国ではATA Carnet、非加盟国や特定貨物ではTemporary Importを使い分けます。
トラブル回避の実務アドバイス
梱包は強化仕様が基本です
木箱や合板クレート、スキッド底上げ、フォークリフト差し込み口の確保、耐水・防錆処理、重心・吊り位置表示、傾斜・衝撃インジケータの装着を推奨します。
書類の記載要件を統一します
Proforma Invoice、Packing List、必要に応じてATA Carnetに、品目名、HSコード、シリアル番号、数量、単価、展示用・No Commercial Valueの表記、原産国、総重量・容積を整合させます。
タイムライン管理を徹底します
事前集荷のデッドライン、到着港のフリータイム、会場の搬入スロット、カルネの有効期限、撤去日の締切を一枚のタイムラインに統合します。
会場規則を早期確認します
ブース高さ制限、車両搬入ルート、空箱の受け渡し方法、時間外作業の申請方法などは展示会ごとに異なります。
指定連絡先の一本化
オンサイト・オフィシャル、オフサイト業者、自社担当の三者で連絡経路を一本化し、誰がいつ何を実施するかを事前に合意します。
環境配慮型物流(Green Logistics)のトレンド
- 近年の展示会では環境対応が重要視され、再利用可能な梱包材やリサイクル可能資材の利用が推奨されています。
- 輸送時のカーボンオフセット、低排出車両の利用、デジタル書類化による紙資源削減などが進んでいます。
- オフィシャルフォワーダーも「グリーン物流対応」をPRする例が増加しています。
オフィシャルフォワーダーの見つけ方
- 出展案内やExhibitor Manualを確認します。多くの主催者は「Official Freight Forwarder」「Official Logistics Partner」として掲載します。
- 展示会公式サイトの Exhibitors セクションに、物流・搬入の案内ページが設けられていることが一般的です。
- 不明な場合は展示会事務局に直接問い合わせるか、日本商工会議所などの関連団体に照会します。
主催者の一次情報の例と確認ポイント
- Messe Frankfurt、RX(旧Reed Exhibitions)、Informa Markets など大手主催者は、各展示会の公式サイトで物流ガイドやオフィシャルフォワーダー情報を公開します。展示会名+“Exhibitor Manual”や“Logistics”で検索し、最新版を確認します。
- 掲載内容は会期ごとに更新されます。過年度版の料金や締切を参照しないよう、発行年・版数を必ずチェックします。
まとめ
- オンサイト・オフィシャルは会場内作業を担い、オフサイト・サービスプロバイダーは国際輸送や通関を担う役割分担があります。
- 会場内ハンドリングはオフィシャルのみ必須という規則があり、米国では特に厳格(Drayage)。
- 費用はハンドリング、保管、労務・機材、書類、追加サーチャージに分けて比較します。
- 破損・遅延リスクに備え、保険加入と免責条件確認は必須です。
- ATA CarnetとTemporary Importを使い分けることが重要です。
- 環境配慮型物流(Green Logistics)対応は今後の展示会での必須要素になりつつあります。