最近、コンテナ輸送費が急激に高騰し、平常時の10倍以上になるケースがあると聞きました。なぜこんな事態が起こっているのでしょうか? そして、どう対策すればいいですか?
まず前提として、以下の回答は、2020年から2022年前後の状況について説明しています。2025年現在も一部の路線は、引き続き運賃は高騰しています。ですが、一時期程の高騰状況ではない点を前提にお読みください。
コンテナ輸送費の高騰は、多くの貿易業者にとって深刻な問題です。特に、アジアから欧州や北米への航路では、輸送費が急上昇し、従来のコスト感覚では対応が難しくなっています。背景には、新型コロナウイルスの影響による電子商取引(EC)の急成長があり、物流需要が急激に増えたことが挙げられます。需要が急増した一方で、船会社の輸送キャパシティには限りがあるため、予約の取り合いが発生し、運賃の高騰を招いています。
運賃が高騰する原因は様々
コンテナ自体の不足も深刻
コンテナ不足の問題も深刻です。世界中で貨物の流れが偏り、特にアジア発のコンテナが供給不足に陥っています。コンテナの回転率が低下すると、輸送キャパシティが制限され、さらに価格が上がるという悪循環が生じています。
港湾混雑など、複数の要因が複雑に絡みあう
港湾の混雑や滞貨も、輸送費高騰の要因として見逃せません。米国西海岸のロサンゼルス港やロングビーチ港では、労働争議や作業の遅れにより、貨物が何週間も滞留する事態が発生しました。このような混雑は、船会社のスケジュールに影響を与え、遅延や抜港を引き起こし、結果として運賃がさらに上昇する要因です。
ウクライナ危機などエネルギー価格が高騰する要因も盛りだくさん
燃料費の上昇も大きな影響を及ぼしています。世界的なエネルギー価格の高騰により、船舶の運航コストが増加し、それが輸送費に直接反映されています。さらに、貿易摩擦や地政学的リスクの高まりも、航路の制限や需要の集中を引き起こし、価格の上昇を加速させています。
輸送費の高騰に対する有効な対策
輸送費の高騰に対応するには、いくつかの戦略的な対策を講じることが重要です。まず、フォワーダーや船会社と密接に連携し、コストの低い輸送ルートや代替輸送手段を検討することが必要です。海上輸送だけに頼るのではなく、鉄道や航空輸送を組み合わせることで、コストと納期のバランスを取ることができます。
1.フォワーダーとは長期的な関係構築を目指すべき
フォワーダーとは価格だけではない長期的な関係の構築が大切です。価格だけで飛びつくようになると、結局、どこからも有利な価格、スペースをとることができ無くなります。フォワーダーと荷主は「持ちつ持たれつ」の関係になることが重要です。
2.長期契約である程度、コミットせよ!
長期契約を活用することで、短期的な価格の急騰リスクを回避することも有効な手段です。輸送費の変動が激しいため、一定期間の固定価格契約を結ぶことで、コストを安定させることが可能になります。特に、大量の貨物を取り扱う事業者にとっては、長期契約の活用が有効なリスク管理手段となるでしょう。
3.高騰する時期をずらす
輸送スケジュールを前倒しし、高騰が予想される時期を避けることも重要です。特に、年末商戦や旧正月前後の繁忙期には、輸送費が急上昇する傾向があります。計画的な出荷スケジュールを見直し、ピーク時を避けることで、コストの上昇を抑えられます。
また、貨物の積載効率を向上させることも、輸送コスト削減につながります。可能な限り1コンテナあたりの積載量を増やすことで、単位当たりの輸送コストを抑えることができます。フォワーダーと協力し、コンソリデーション(混載)を活用することで、小口貨物でも効率的に輸送する手段を検討するのが効果的です。
小規模な貿易業者にとっては、大手企業に比べて輸送の優先順位が低くなりがちですが、フォワーダーとの関係を強化することで、より有利な輸送条件を引き出すことが可能になります。また、混雑の少ない港を利用することで、滞貨による遅延や追加コストを最小限に抑えることも一つの解決策となります。
このように、コンテナ輸送費の高騰に対処するためには、柔軟な輸送戦略と事前の計画が不可欠です。短期的な価格変動に振り回されるのではなく、長期的な視点でコスト管理を行い、さまざまな選択肢を検討することが、今後の貿易活動の安定にとって重要になるでしょう。
パンデミックは繰り返される!? 10年後に再び発生するかも!?
パンデミックは再び繰り返される可能性があります。今回のコロナショックによる物流の混乱は、もしかすると、2030年ごろに再び発生するかもしれません!
人は喉元を過ぎれば~といわれる程、すぐに忘れると言われます。そうならないためにも、今一度、今回の運賃高騰騒動を振り返り、今後の対策をしっかりと考えることをおススメします。必ず今回のようなことは再び起きるでしょう。
まとめ
- コンテナ輸送費は需要増加、コンテナ不足、港湾混雑、燃料費の上昇、地政学的リスクなどが影響し急騰
- アジア発の輸送ルートでは、平常時の10倍以上の運賃になったケースもあり!
- フォワーダーとの密な連携や代替ルート(鉄道・航空輸送)の活用が重要。
- 長期契約を利用することで、価格変動のリスクを軽減することが可能。
- 出荷スケジュールを前倒しし、需要のピーク時を避けることでコストを抑えられる。
- 貨物の積載効率を上げ、1コンテナあたりのコストを削減する工夫が必要。
- 小規模事業者はフォワーダーとの関係を強化し、混雑の少ない港を活用することで輸送遅延を防ぐことができる。
- 柔軟な輸送戦略と事前の計画が不可欠であり、短期的な価格変動に対応するための多様な選択肢を持つことが重要。