この記事では、ドレージの基本知識から、輸送の流れ、費用構造、車両の種類、業者の選び方、さらにはトラブル事例や混同されやすい用語までを網羅的に解説します。コンテナ輸送をよりスムーズに行うために、基礎から実務までしっかりと理解しましょう。
コンテナ輸送とドレー
ドレージ(ドレー)とは?
ドレージ(別称:ドレー)とは、港のコンテナターミナルから倉庫や工場などの指定地までコンテナを輸送する作業・手段のことです。主に20FTまたは40FTコンテナを、専用のシャーシと呼ばれる台車を用いてトラックで輸送します。
英語・語源の由来
- 英語表記:Drayage
- 語源:馬車(Dray)で貨物を港から移動していたことに由来します。
- 限られた範囲内の短距離輸送を意味する言葉です。

輸送するコンテナは、主に20フィート(6m)と40フィート(12m)の二種類です。コンテナ自体は、すべて同じ規格のため、どのドレージ会社に依頼しても輸送できます。
ドレージの役割と輸送フロー
ドレージの重要性
ドレージは、海上輸送と国内物流をつなぐ最終マイル輸送の要です。通関業務やデバンニングと密接に関係しており、手配ミスがあると納期遅延やコスト増加に直結します。
輸出ドレージの流れ
- 通関業者(フォワーダー)に連絡をして本船のブッキングをする。
- 通関業者等にバンニング日(コンテナに貨物を積める日)を伝える。
- 通関業者の依頼を受けたドレー会社がヤードから空のコンテナをピックアップ(EIR OUT)
- 指定の日に空のコンテナを指定場所に着ける。
- 荷主は、空のコンテナが到着したらバンニングをする。
- バンニングが完了したら、実入りコンテナのターミナルへの移動
- 実入りのコンテナがヤードに入る(EIR IN)
- 保税蔵置後、輸出申告をする。
- 輸出許可が下りる。(カット日までに終了させておく)
- 本船に積み込む
輸入ドレージの流れ
- 本船が到着し、港にコンテナが蔵置される(搬入があがる)
- 通関業者とやり取りをして輸入許可後の配送先等を相談する。
- 通関業者からドレージ会社に配送先、配送日などの指示を出す。
- 輸入許可後、ドレージ会社は、実入りコンテナをヤードから搬出(EIR OUT)
- ドレージ会社は、指定の日、指定の場所までコンテナを移動する。
- 実入りコンテナが到着したら、荷主は、デバン(コンテナ取り出し作業)を開始
- コンテナ到着時間から2時間以内にデバンを完了さえる。
- デバンが完了したら通関業者に連絡を入れる。
- ドレージ会社は、空のコンテナをターミナルに移動させる(EIR IN)
これが輸出と輸入におけるドレージの流れです。この中で特に重要な部分は、輸出入許可の取得、D/O処理、ドレージの予約です。どれか一つでも落とすと、指定の日に配送ができなくなります。
- 輸出許可=本船のカット日までに取得が必要です。
- 輸入許可=納品日の前日までに取得が必要です。万が一、前日までにピックアップができない場合は、当日ピックアップ&配送となり、指定の時間にコンテナを付けられないです。
- D/O処理=ヤードからコンテナを引き取るには、輸入許可の取得+D/Oの2つが完了していることが条件です。D/Oは、アライバルノーティスに記載されている諸費用を支払うことで受け取れます。輸入許可&D/Oの処理が完了=コンテナの引き取りができます。
- ドレージの予約=近年、トラックドライバーの不足、港での混雑の激化などにより、ドレージの予約を取りずらい状況にあります。輸入日程が決まり次第、通関業者と相談をして、輸入許可後のドレージ手配まで行ってもらうようにしましょう!(予約)
ドレージ輸送の車両と種類
車両種別 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
2軸シャーシ | 軽量・短距離向き | 一般的な輸送 |
3軸シャーシ | 重量対応・割増料金 | 重量貨物 |
低床ドレー | 車高が低い | 大型機械、背の高い貨物 |
高床ドレー | 標準トレーラー | 一般貨物全般 |
リーファー対応 | 冷蔵・冷凍輸送 | 食品・医薬品 |
通関業者から「このコンテナは3軸シャーシが必要」と言われた。どういう意味?
参考情報1:低床ドレーと高床ドレーの違いは?
低床ドレー(ローベッドトレーラー)
低床ドレーは、地面からの高さが低いトレーラーで、大型機械や重量物などの特殊貨物を輸送する際に使用されます。低床のため、高さ制限のある貨物や安定性が求められる貨物の輸送に最適です。
高床ドレー(スタンダードトレーラー)
高床ドレーは、一般的なコンテナ輸送に使用されるトレーラーです。地面からの高さが通常1.2〜1.3メートル程度あります。
使い分けのポイント
-
- 低床ドレー:重量物、背の高い貨物、特殊機械を輸送する際に利用
- 高床ドレー:一般的なコンテナ輸送に適し、コストが比較的安い。
ドレージの費用と料金体系
ラウンド制とは?
ドレージは港~納品先の往復距離(ラウンド)で課金されます。
- 例:片道20km → 20×2=ラウンド40
料金の決まり方
- 基本:タリフ(標準料金)×荷主ごとの料率
- 優良顧客は料率が低くなり、コストが下がります。
例:
荷主 | タリフ | 料率 | 実際の支払 |
A社 | 10,000円 | 50% | 5,000円 |
B社 | 10,000円 | 70% | 7,000円 |

お得意様ほど、より有利な料率が適用されます
割増料金の例
- 3軸シャーシ使用
- リーファーコンテナ
- 深夜・早朝配送
- 待機時間超過(2時間以上)
- 切り離し(ドロップ料金)
消費税の節税ポイント
インランドデポ活用で、港から内陸部までは保税運送 → 不課税対象にできます。
【ICD】インランドデポとは? メリット、デメリット、ドレージ戦略を徹底解説
大前提 直接、荷主が依頼することは少ない。多くは通関業者経由
直接、荷主がドレージ会社に依頼するケースは少ないです。多くは、依頼する通関業者経由でドレージを手配するケースが多いと思います。つまり、ドレージの手配は、通関業者の営業とのやり取りで行います。(納品日の調整も含む)
但し、月間、40フィート換算で数十本の輸送取引等がある場合は、通関業者を通さず、直接、ドレージ会社とやり取りをした方が安くなるケースが出てきます。通関業者を通してドレーを手配すると、通関業者のマージンが乗った利用金を支払うことになるからです。
ドレージのメリット・デメリット
メリット
- 荷物を直接コンテナで輸送できる → 荷傷みリスク減
- バンニング/デバンの自由度が高い
- 通関業者との連携が効率的
デメリット
- 混雑時に手配困難
- トラックドライバー不足(2024年問題)
- 待機料など追加コストの発生
ドレージ業界の課題と動向
- ドライバー不足、車両不足
- 港湾混雑(特に東京・横浜・神戸)
- 値上げ傾向(燃料費、作業員確保)
- 混載便との競合、CFS活用との兼ね合い
ドレージ手配と業者選びのコツ
- 多くは通関業者経由で手配
- 月間輸送数が多ければ直接契約も有利
- 地域密着型ドレージ業者を知るには現地営業や紹介が重要
主なドレージ拠点
東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港、門司港、博多港、新潟港、苫小牧港など
既述の通り、ドレージ業者は、直接依頼できる一方、通関業者やフォワーダー経由で依頼する方が多いです。直接契約する場合は、ある程度の規模感が必要です。規模感がない場合は、直接契約するだけ無駄です。
ドレージ会社は、通関業者やフォワーダーと非常に密接なつながりがあります。通関業者によっては、自社内でドレージ部門を所有している所もあります。したがって、まずは、ドレージ会社等との直接契約等は考えず、自社の実績を積み上げていくことが重要です。
ある程度の事績が出来たら、その実績を基にして、メインで利用する港近くで営業するドレージ会社に連絡をして交渉してみると良いと思います。
ドレージ会社や通関業者は、外からは中々、わかりずらい業界です。ネット上でもあまり情報を確認できない為、確かな筋から少しずつ、つながりを作っていくしかないと思います。結果的にそれが良いドレー会社と巡り合う為の近道です。
よくあるトラブルと注意点
- D/O処理遅延でコンテナ引取不可
- ドレージ予約が取れず納品遅延
- 通関ミスで許可が間に合わない
- 待機料の発生やキャンセル料請求
関連用語と混同注意
用語 | 意味 | 備考 |
デバンニング | コンテナから荷物を取り出す | デバンとも略す |
ショートドレージ | 港近距離間の横持輸送 | CFS⇔税関検査場など |
ドレーン | 排水設備 | 建築用語・物流とは無関係 |
ドレープ | 衣類のひだ | アパレル用語 |
ドレー | ドレージの略称 | 通常は同義で使用 |
ドレージの英語表現と海外との違い
- 英語:Drayage, Dray truck
- 米国では鉄道インターラインとの接続に利用されることも
- 中国語:拖车运输
- 欧州ではより鉄道や河川輸送と連携した運用が多い

例えば、税関検査が確定した場合は、ドレー会社に検査場へのショートドレージの予約等をすることになります。当然、ショートドレージ代金が別に請求されます。
まとめ
- ドレージはコンテナ輸送におけるラストワンマイルの要
- 通関、バンニング/デバンとの関係が深く、納期やコストに大きく関わる
- 車両種類・料金体系・税制優遇など、実務上のポイントを押さえることが重要
- よく似た言葉との混同に注意し、輸送戦略を最適化しよう