輸入後のラストワンマイル配送はどう選ぶ?混載便とチャーター便を徹底比較
輸入通関が終わっても、物流はまだ終わらない
輸入通関が完了した後、多くの荷主が直面するのが「どのように店舗や倉庫まで届けるか」という国内配送の問題です。特にコンテナ単位ではなく、CFSでデバンニングされた貨物や、港での一時保管が必要になったケースでは、その後の配送方法が業務の効率性とコストに大きく影響します。
国内配送でよく利用される手段には「混載便」と「チャーター便」があります。それぞれの特徴や制約、向き・不向きについて十分に理解しておくことが重要です。
この記事では、ラストワンマイルの配送手段としての混載便とチャーター便について、実務者視点で比較・解説します。
混載便:コスト重視だが制限も多い配送方式
混載便は、複数の荷主の貨物を同じトラックに積載し、定期ルートに沿って順次配送するスタイルです。費用面では最も経済的で、小口輸送や急ぎでない貨物には非常に有効です。
しかし、混載便には明確な制約もあります。まず第一に、荷物の形状やサイズが限られる点です。長尺貨物(2メートル超)や重量物、特殊形状品などは受け入れてもらえないケースが多く、混載のルールに適合しない貨物は輸送自体が困難になります。また、配送日時を細かく指定できないため、「午前中着必須」「納品スロット指定」といった納品条件がある場合には適しません。
さらに、混載便は再配達になるリスクも抱えています。納品先が不在だったり、荷受け設備が整っていなかったりすると、再度持ち帰って別日に配送することになります。この際、別途料金が発生することが一般的です。
チャーター便:柔軟性と確実性を兼ね備えた選択肢
チャーター便は、1台のトラックを1社専用で利用する方式です。時間指定、配送ルート、車両の種類(平車、パワーゲート車、ユニック車など)を自由に設定できるため、荷主にとって高い自由度と確実性があります。
たとえば、税関検査により保税倉庫での立ち会いや貨物引取りが必要となった場合、荷物をそのままチャーター便に積み替えて配送するのが一般的です。このように、突発的な対応にも柔軟に対応できるのがチャーター便の最大の強みです。
また、納品先にフォークリフトがない場合や、地上階への吊り下げ搬入が必要な場合は、ユニック車(クレーン付き車両)をチャーターする選択が求められます。混載便ではこのような特殊車両の手配が難しく、対応できないことが多いため、事前に納品条件を確認し、チャーター便を検討する必要があります。
デメリットとしては、当然ながらコストが高い点が挙げられます。運賃は距離、車種、時間帯、待機時間などに応じて変動するため、予算に合わせた調整が必要です。ただし、再配達や荷物トラブルによる損失を避けられるという意味では、チャーター便の導入はコスト以上の価値を生む場合があります。
配送手段の選定基準は「荷物・納品先・条件の三重構造」
どちらを選ぶべきか迷う場面では、以下の3点を基準に検討すると良いです。
- 荷物の特性:大きさ・重量・形状・破損リスク。長尺やパレット単位ならチャーターが安心。
- 納品先の条件:納品可能時間、設備の有無(リフト、スロープなど)、アクセス道路の広さ。
- 納品条件の制約:午前必着、定休日不可、時間帯指定、車両制限(2トン車以下など)など。
このように「荷物×納品先×納品条件」の三重構造で考えると、どちらが最適かが見えてきます。安さだけを優先して混載便を選ぶと、現場で受け取りができず再配達になるなど、かえって高くつく結果になることも少なくありません。
実例:アパレルと設備機器の配送判断の違い
例えば、アパレル製品のように梱包が小さく、破損リスクも低く、納品先も商業施設で設備が整っている場合は混載便での配送が適しています。一方で、什器・長尺金物・厨房設備機器などの輸入品を、搬入経路の狭い店舗に納品する場合、チャーター便、さらにユニック車の活用が必要になるケースが多くなります。
また、展示会や短期間の催事イベントなど「○月×日午前中に必着」といった厳しい納期管理が求められる場合も、混載便では対応が難しく、チャーター便一択になることがほとんどです。
混載でもチャーターでも事前準備がカギ
どちらの手段を選んだとしても、配送がスムーズに行われるかどうかは、事前の準備によります。以下のポイントは共通して重要です。
- 荷姿情報(サイズ、重量、個数)を正確に伝える
- 納品先の条件(時間帯、設備有無、搬入経路)を明確にする
- 納品先責任者の連絡先や緊急連絡手段を準備する
- 再配達リスクを回避するための対策(前日連絡など)
これらを怠ると、どれだけ最適な輸送手段を選んでも、現場での混乱や想定外のコストが発生する可能性が高まります。

貿易書類のパッキングリストを渡して相談するとより正確な打ち合わせができます。
まとめ
- 混載便はコスト重視、小口配送向き。時間指定や長尺貨物には不向き
- チャーター便は自由度が高く、特殊貨物や時間指定に最適
- 税関検査対応、ユニック車利用など、チャーター便でしか対応できないケースも多い
- 輸送手段の選定は「荷物の特性」「納品先の条件」「納品条件の制約」で判断する
- いずれを選ぶ場合も、事前準備と現場との情報共有が成功の鍵
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