国際貿易において、貨物の輸出入時に税関検査に選ばれることは避けられません。しかし、なぜ特定の貨物が検査対象となるのか、どのようにすれば検査の確率を下げることができるのかを知ることは、物流コストと時間の節約につながります。
この記事では、税関検査の基準、輸出入者符号の実績と検査区分、予備申告の重要性、そして税関検査の種類と費用例について詳しく解説します。
税関検査
税関検査に当たりやすい貨物や事業者の特徴
税関は、不正な貨物の持ち込みや脱税を防ぐために、輸出入貨物の検査を行います。税関検査に当たりやすい主な要因には、次のようなものがあります。
- 新規事業者、実績が少ない人
- 高額な商品、関税率が高い商品
- 危険物や食品などの他法令貨物
- 書類の不備
- 過去に違反歴がある人
1.新規事業者や取引実績が少ない事業者
過去の輸出入実績が少ない事業者は、取引内容が不透明と見なされることが多く、検査の対象になりやすいです。
2.高額な商品や関税が高い商品
宝飾品、高級ブランド品、電子機器などの高額商品は、適正な申告がされているか確認するために検査される傾向があります。
3.危険物や医薬品、食品関連
化学品、医薬品、食品などの取り扱いには特別な規制があり、規制違反がないか確認されます。
4.インボイスやパッキングリストの不備
申告内容と貨物の内容が一致していない場合、税関の判断で詳細な検査が行われます。
5.過去に問題があった事業者
過去に違反歴があると、その後の取引でも厳しく監視される傾向があります。
税関検査の種類
税関が行う検査には、主に以下の3種類があります。
- 書類審査
- X線検査
- 開披検査
1.書類審査(Documentary Examination)
申告書類の内容が適切であるかを確認する段階です。書類に不備がなければ、追加の検査なしで通関できます。
2.X線検査(X-ray Inspection)
コンテナや貨物を開封せずに、X線装置で内部を確認します。貨物の形状や内容が申告内容と異なる場合、さらに詳細な検査へ進むことがあります。
3.開封検査(Physical Inspection)
税関職員が貨物を直接開封し、内容物を確認する最も厳格な検査です。商品の数量や材質、輸入規制に違反していないかを詳細に調査されます。
税関検査で指摘されやすい事項
税関検査で特に問題視される点として、以下のような事例があります。
- 書類不備
- 申告内容と実物の相違
- 原産地表示の不一致
- 危険物等のご申告
書類不備
インボイス、パッキングリスト、原産地証明書などに不備がある場合、税関から追加の確認を求められることがあります。
申告内容と実際の貨物の相違
申告した貨物の内容や数量が実際と異なる場合、開封検査に進む可能性が高くなります。
原産地表示の不一致
特定の関税優遇措置を適用するために提出する原産地証明書が正しくない場合、関税の修正や追加課税が行われることがあります。
危険物の誤申告
輸送時に適切な申告がされていない危険物や規制対象品は、特に厳しい審査を受けることになります。
税関検査の最悪なパターン(内容点検、破棄、積戻し)
税関検査において、最悪のケースとして以下の措置が取られることがあります。
- 内容点検
- 貨物の破棄
- 積戻し
1.内容点検
申告内容と実際の貨物の相違が疑われた場合、開封検査が行われます。この際、税関職員が貨物を直接確認し、不正がないかを詳細に調査します。点検の結果、記載内容と異なる場合は修正申告や追加関税の支払いが必要になることがあります。
2.貨物の破棄
申告された貨物が違法なものであったり、輸入禁止品に該当する場合、税関の判断で貨物が破棄されることがあります。特に医薬品や食品、偽造品などの規制対象商品は破棄されるリスクが高いです。
3.積戻し
貨物が適正に申告されていない、または輸入許可が下りない場合、輸出国へ積戻しされることがあります。この場合、輸送費や手続き費用が発生するため、事前の確認と正確な申告が重要です。
税関検査にかかる費用は?
税関検査自体は無料です。請求されるのは、税関検査場所に移動する費用(ショートドレージ代金)、通関業者の立会い料などです。それらを統合して「税関検査費用」として、通関業者より請求されます。
税関検査と貨物の引き取り・納品日との関係
税関検査が入ると、貨物の引き取りや最終納品日に影響を及ぼします。
例えば、スケジュール通りに輸送が進むと考えていた場合でも、税関検査によって数日間の遅れが生じる可能性があります。そのため、納品スケジュールに余裕を持たせることが重要です。
特に納期が厳しい取引の場合、予備申告を行い、事前に通関手続きを進めておくことで、スムーズな貨物の引き取りを実現できます。また、貨物の種類によっては、事前に税関職員と相談することで、必要な書類の準備や手続きを短縮できます。
税関検査の確率を下げる方法
税関検査の確率を下げるためには、以下のポイントを意識すると良いです。
- 輸出入者符号で実績を積み重ねる
- 書類の正確性を保つ
- 事前相談をする
- フォワーダーや通関業者と密な連絡をする。
1.輸出入者符号(通関実績)を積み重ねる
輸出入者符号とは、通関実績を持つ事業者に割り当てられるコードで、実績がある事業者は信頼性が高いと見なされ、税関検査の頻度が低くなります。
2.書類の正確性を保つ
インボイス、パッキングリスト、原産地証明書などの必要書類を正確に記載し、税関からの疑義が発生しないようにする。
3.事前相談を活用する
税関には、通関手続きに関する事前相談窓口があり、そこで相談することで、必要な手続きを明確にできます。
4.フォワーダーや通関業者と密に連携する
経験豊富なフォワーダーを活用し、貨物の特性や輸送ルートに応じた最適な申告を行う。
まとめ
税関検査は、事業者の信頼性、貨物の種類、申告内容によって確率が変動します。特に新規事業者や高額商品、危険物の輸送には注意が必要です。税関検査には書類審査、X線検査、開封検査の3種類があり、それぞれ費用や時間が異なります。税関検査を回避するためには、輸出入者符号の実績を積み重ね、書類の正確性を保ち、事前相談やフォワーダーとの連携を強化することが重要です。
国際物流のスムーズな進行のためには、税関検査に関する知識を深め、適切な準備を行うことが成功の鍵となります。
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