洗剤の輸入に関する基本知識
洗剤は「雑貨類」に分類されることが多いものの、化学物質を含むため、その成分によっては毒物・劇物や危険物の規制対象となる可能性があります。特に業務用や濃縮タイプなどは、法的な規制への該当性を事前に確認することが重要です。
また、製品の物性(可燃性・腐食性・刺激性など)によっては、輸送や通関時に追加の手続きや確認が求められることがあります。輸入時点で「危険物ではないこと」「毒劇物に該当しないこと」を証明できるよう、十分な書類の整備が不可欠です。

身体用(化粧石けん・薬用石けん)は薬機法(医薬品医療機器等法)、食器用・洗濯用は家庭用品品質表示法や食品衛生法など、洗剤の用途ごとに適用法令が違います
輸入に必要な主な書類
洗剤を輸入するときに必要な書類は以下の通りです。
SDS(安全データシート)
製品の成分や化学的性質、危険性、応急処置方法などを記載。日本語版の提出が求められます。
インボイス(Commercial Invoice)
取引金額、商品名、数量、価格条件などの基本情報を記載。
パッキングリスト(Packing List)
実際の梱包内容・重量・サイズなどの明細書。
輸入申告書
税関へ輸入申告する際に作成する主文書。通関業者が作成するのが一般的です。
シッピングインストラクション(船積依頼書)・委任状
通関業者やフォワーダーに通関・輸送を委託する際に必要。
必要に応じて提出すべき追加書類
成分表、製造工程書、用途説明書など。特に成分規制や使用目的によっては審査時に要求されます。
洗剤の輸入手続きの流れ
洗剤輸入の基本的な流れは以下の通りです。
1.製品選定と輸入可否の確認
SDSや成分表を基に、毒劇物、消防法、化審法(化学物質審査規制法)などの規制に該当しないかを事前に確認します。
2.書類準備
SDS(日本語版)、インボイス、パッキングリスト、用途説明書などの書類を整備。
3.通関業者の選定・依頼
経験豊富な通関業者に相談し、委任状やシッピングインストラクションを発行。
4.輸入申告と審査
税関に輸入申告書を提出。内容により追加資料の要求や成分検査が行われることも。
5.輸入許可と貨物引き取り
問題がなければ輸入許可が下り、貨物を引き取ることができます。
国際輸送時に必要な書類とポイント
洗剤は液体や粉体であるため、漏れや破損が起きやすく、輸送モードや梱包方法に細心の注意が必要です。化学品を安全に輸送するためには、以下の書類が必要です。
B/L(船荷証券)またはAWB(航空運送状)
国際輸送における貨物の所有権や輸送契約を証明する基本書類です。海上輸送ではB/L(Bill of Lading)、航空輸送ではAWB(Air Waybill)が使用されます。これらの書類には正確な品名、数量、容積、重量、荷受人などが記載されています。
保険証券(Cargo Insurance Policy)
洗剤は破損や液漏れ、化学変化による品質低下のリスクを伴うため、輸送中の損害を補償する貨物保険に加入することが望ましいです。インボイス価格に保険料(CIF条件)が含まれているかどうかも確認しましょう。
SDSに基づくラベリング
輸送中の識別や緊急時の対応のため、容器や外装箱にSDSに基づく適切なラベル(GHS表示、注意喚起文、取り扱い注意表示など)を付ける必要があります。ラベル不備は通関保留の原因になります。
梱包基準と容器の適合
洗剤の成分によっては、UN規格(国連勧告)に準拠した梱包容器の使用が義務づけられることがあります。腐食性や可燃性のある製品は、耐漏れ・耐圧仕様の容器を使用し、緩衝材や二重包装が推奨されます。危険物ではない場合でも、十分な耐久性と密閉性のある梱包が必要です。
輸送モードの選定と制限
航空輸送はスピードが早く便利ですが、液体の化学品や危険物には厳しい制限があります。小ロットやサンプル輸送には適していますが、成分によっては搭載不可となる場合もあるため、事前の航空会社またはフォワーダーへの確認が必須です。海上輸送は大量輸送に向きますが、輸送日数と温湿度管理の検討が必要です。
その他の補足書類
洗剤の原産国によっては、原産地証明書、成分証明書、輸送用技術文書(Transport Document for Chemical Goods)などが必要になる場合があります。輸出国・輸入国の双方の規制に注意してください。
これらの輸送関連書類や対応を正確に整備することで、通関遅延や輸送事故を未然に防ぎ、安全・円滑な輸入につながります。
洗剤特有の注意点
化審法対象物質の場合の記載義務
化学物質審査規制法(化審法)に該当する洗剤成分を含む場合、インボイスまたは輸入申告書に「官報整理番号」を記載する必要があります。これは法令遵守の観点から非常に重要であり、記載がない場合、通関が保留または差し止めとなるリスクがあります。
輸入国による追加規制への対応
輸入元によっては、原産地証明書や現地言語(例:中国語)でのSDS、輸出国独自の規制適合証明などが求められる場合があります。製造元・輸出者と早い段階で確認を取りましょう。
危険物該当時の追加手続き
洗剤が国際輸送上の「危険物」に該当する場合、国際規格に基づくUN容器の使用、危険物容器検査証の添付、クラス分類(例:クラス8=腐食性)などが必要です。該当性判断はSDSに基づいて行われます。
SDSの内容と最新性の確認
SDSはJIS Z 7253に基づく最新フォーマットに準拠し、すべての必須項目(危険性要約、応急処置、運搬上の注意、廃棄方法など)が網羅されている必要があります。作成から5年以内の最新版であることが望ましいです。
日本国内の規格への適合確認
成分が日本国内の規制(厚労省や経産省の指針)に反していないか、事前に調査が必要。
SDSの日本語版提出義務
国内流通前には必ず日本語でのSDSが必要。JIS Z 7253:2019などが参照されます。
用途による分類確認
業務用・家庭用の違い、洗浄用途か殺菌用途かで薬機法や化審法の適用が分かれます。
医薬部外品の可能性
薬用表示(除菌、抗菌など)や人体に直接使用する用途がある場合は、薬機法の対象になり、別途許可が必要となることがあります。
よくあるトラブルと対策
- SDSが不完全・英語版のみで日本語訳がない → 事前に日本語SDSを用意。専門翻訳サービスの活用も視野に。
- 成分規制違反 → 製造元から詳細な成分表を取り寄せ、専門家や当局への事前確認を行う。
- ラベル不備・梱包破損 → 出荷時に現地での確認を徹底。危険物ラベルの不要性も含め、輸送業者と連携を。
- 通関書類の不備 → 通関業者とダブルチェックを行い、シッピングインストラクションの内容を明確に。
まとめ・チェックリスト
必要書類一覧
- SDS(日本語版)
- インボイス
- パッキングリスト
- 成分表、製造工程書(必要に応じて)
- B/LまたはAWB
- 保険証券
- 輸入申告書
- 委任状・シッピングインストラクション
注意点(ワンポイント)
- 化学物質規制(毒劇物、化審法、消防法)該当性に注意
- 日本語SDSの用意と表示ラベルの整備
- 輸送時の安全管理と事前チェック
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