国際輸送において、危険物の取扱いは非常に厳格な規制のもとで行われます。危険物の輸送に関する書類が不備があると、貨物の積載拒否や通関遅延、罰則の対象となることがあります。特に、国際規制と各国の法律が絡み合うため、一つの小さなミスが大きな問題へと発展することも少なくありません。
本記事では、危険物関連書類の不備によって発生するトラブルの具体例とそれらを回避するための対策について詳しく解説していきます。
危険物関連書類の不備によるトラブルの原因
危険物の輸送には、正確な書類が不可欠です。代表的な書類には、
- 危険物申告書（Dangerous Goods Declaration: DGD）
- 安全データシート（SDS）
- 船荷証券（B/L）
- 航空運送状（AWB）
- パッキングリスト
などがあります。これらの書類に不備があると、輸送中にさまざまな問題がおきます。
例えば、危険物申告書に正しいUN番号（国連番号）が記載されていなかった場合、航空会社や船会社が貨物を受け入れず、スケジュールの遅延につながることがあります。また、安全データシートに誤った情報が記載されていると、税関や検査機関が貨物を適切に処理できず、場合によっては輸送の許可が下りないこともあります。
実際に発生したトラブル事例
SDSの記載ミストラブル
ある日本企業がリチウムイオン電池を海外に輸出する際、安全データシート（SDS）の記載ミスにより貨物が輸送できなくなる事態が発生しました。このケースでは、バッテリーの分類が誤って記載されており、輸送基準を満たしていないと判断されたため、航空会社が貨物の積載を拒否しました。最終的に、修正された書類を提出するまでに1週間以上の遅れが発生し、取引先との納期トラブルへと発展しました。
危険区分の分類ミス
化学薬品を輸送する際に危険物申告書の危険区分が間違って記載されており、到着国の税関で貨物が一時保留となりました。この影響で、貨物の保管料や再検査の費用が発生し、輸送コストが大幅に増加する事態となりました。
パッキングリストとケースマークミス
アメリカの企業がヨーロッパの顧客向けに腐食性化学物質を輸送する際、適切なパッキングリストとマーキングが欠落していたため、港で貨物が受け入れられず返送されるトラブルが発生しました。このケースでは、危険物輸送のガイドラインに従った書類の作成が行われていなかったため、受取国の規制に適合せず、結果として企業側が高額な返送費用を負担することになりました。
より具体的な解決策と対応方法
これらのトラブルを解決するためには、書類の作成や確認のプロセスを遵守し、国際規格に準拠した手続きを行うことが重要です。
リチウムイオン電池
まずは、専門の危険物輸送に関するマニュアルの購入、セミナーへの参加、又は、アドバイザーを雇うことが重要です。その結果、バッテリーの正しい分類コードと危険区分を再確認し、適切な申告書類を再提出できます。今後のリスクを減らすため、定期的な社内研修を実施し、最新の輸送規制をフォローするのも重要です。
危険物申告書の誤記載
化学薬品の危険物申告書の誤記載によるトラブルでは、貨物が到着国の税関で保留された際、輸出者が現地の通関業者と連携し、訂正書類を迅速に提出。手続きを迅速に進めることで、輸送の遅延を最小限に抑ることに成功。企業は今後同様のミスを防ぐために、輸送前の書類レビューを義務付け、複数の担当者が書類をチェックするようにしました。
腐食性化学物質の輸送トラブル
腐食性化学物質の輸送トラブルでは、企業が問題の発生後、フォワーダーと連携し、国際基準（IMDGコードおよびIATA DGR）に沿ったマーキングとラベリングの再確認を行いました。その結果、適切なラベルとパッキングリストを作成し、輸送再開の許可を得ることができました。さらに、将来的なリスクを減らすため、危険物輸送の専門資格を持つスタッフを増員し、社内の輸送管理体制を強化しました。
こうした事例を通じて、トラブルが発生した際の迅速な対応と、事前の確認プロセスの重要性が明らかになります。企業は、危険物輸送の専門家やフォワーダーと緊密に連携し、適切な書類管理とチェック体制を確立することで、リスクを最小限にできます。
危険物関連書類の不備を防ぐための対策
危険物関連のトラブルを避けるために以下の点に注意しましょう！
危険物申告書の内容を細かくチェックせよ
まず、危険物申告書の記載内容を事前に細かくチェックします。UN番号、クラス分類、パッキンググループの誤りがないはないですか？ 必要な場合は、専門家への相談が必要です。特に、国際航空運送協会（IATA）や国際海事機関（IMO）のガイドラインを常に確認し、最新の基準に基づいた記載を行うことが必要です。
安全データシートの記載内容のチェック
安全データシート（SDS）の内容を正しく記載し、最新の情報を理解しておきます。SDSは輸送中の安全性を確保するための重要な書類であり、発行日が古すぎる場合や情報が不正確な場合、輸送会社が受け入れを拒否することがあります。
貨物のラベル要件はOK？
貨物のラベルやマーキングは適切ですか？
例えば、危険物には規定された警告ラベルを貼付する必要があり、これが不適切な場合、通関や荷受けの際に問題が発生することがあります。ラベルの内容が規制に適合しているかどうかを、事前にチェックする習慣をつけることが重要です。
危険物輸送が得意なフォワーダーに依頼しよう！
危険物輸送を得意とするフォワーダーとの連携も重要です。信頼できるフォワーダーは危険物輸送に関する知識を持っており、書類の不備を事前に指摘してくれることがあります。事前のダブルチェックを行うことで、ミスを最小限に抑えることが可能になります。
危険物輸送が得意なフォワーダーに相談をしましょう！
まとめ
危険物関連書類の不備は、貨物の積載拒否や通関遅延、さらには法的リスクにもつながる重大な問題です。実際に発生した事例を見ても、書類の記載ミスが大きなトラブルを引き起こし、余計なコストや時間の消費するとになります。
危険物関連のトラブルを避けるためにも危険物申告書や安全データシートの記載内容を厳密にチェックし、最新の規制に準拠します。また、貨物のラベルやマーキングの確認、フォワーダーとの連携を強化することで、リスクを最小限に抑えることができます。適切な書類管理を行い、安全かつスムーズな国際輸送を実現しましょう。
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