貿易において重要な要素である海上運賃。料金の決定には、さまざまな要素が関係します。この記事では、海上運賃の決まり方や、料金に影響を与える主要な要素について詳しく解説します。
海上運賃の決まり方
海上運賃とは?
海上運賃とは、海上輸送をするために船会社に支払う料金です。ここでは理解しやすいようコンテナ輸送にかかる費用を「海上運賃」とします。
海上運賃は、以下の2つに大別されます。
- 基本運賃(オーシャンフレート又はベースレート)
- サーチャージ
1.基本運賃(Base Rate)
基本運賃は、別称、ベースレートとも言います。アライバルノーティスには、オーシャンフレイトとも記載されています。ベースレートの名の通り、海上輸送費を構成する大部分です。実は、この基本運賃は、以前まで価格協定(カルテル)が存在していました。=船社各社が紳士協定を結ぶ、自由な競争環境が実現されにくい状況
しかしながら、1960年代~70年代にのコンテナ化の波が始まり、さらに2000年代初頭の自由貿易化により、2024年現在は、輸送を効率するためのグループに変化しています。
2.サーチャージ(Surcharge)
サーチャージは、基本運賃の他、追加される各種費用です。時の経過による価格変化が激しい費用を臨時的に追加する意味合いがあります。代表的なサーチャージには、次の物があります。
- 燃料サーチャージ: 燃料価格の変動に基づく追加料金
- 通貨調整係数: 通貨レートの変動に基づく追加料金
- 港湾費用: 荷役費用、港湾使用料、税金など
- セキュリティーチャージ: ISPSチャージなど
- ピークシーズンサーチャージ: 繁忙期にかかる追加料金
- 低硫黄燃料サーチャージ: 環境規制に基づく追加料金
- 貨物保険料: 貨物の保険にかかる料金
コンテナ輸送費=海上運賃(ベースレート)+サーチャージです。この費用は、本船入港間際に発行されるアライバルノーティスに記載されます。(請求元は船会社又はフォワーダー)
海上運賃に影響を与える要因
何が?海上運賃に影響を与えるのでしょうか? 代表的な要因は、次の通りです。
- 輸送距離
- 貨物の種類と重量
- 需給バランス
- 港湾の混雑状況
- 国際情勢
輸送距離
輸送距離が長くなるほど運賃は高くなります。
貨物の種類と重量
コンテナに収まりきらない貨物(オーバーゲージ等)、一定上の重量物、特殊な貨物(危険物や冷蔵・冷凍貨物)は、運賃が高くなります。
オンデッキとアンダーデッキ
オンデッキとは、本船甲板上に載せることです。アンダーデッキとは、甲板下です。この違いは、外からのダメージです。オンデッキの場合は、直接、潮風や太陽の影響を受けるため、貨物へのダメージが発生しやすいです。
アンダーデッキは、スペースの確保が難しい、複雑な荷役が必要などの理由から、オンデッキよりも料金が高いです。
需給バランス
航路毎の船舶の供給量や貨物の需給バランスも影響します。
例えば、クリスマスシーズンは、中国の工場から北米方面への輸出が盛んに行われます。当然、日本発も北米向け輸送料金も中国の影響を受けて上昇します。
他、コンテナ船自体の数も関係してきます。最近、メガキャリアと呼ばれる超大型のコンテナ船の建造が相次いでいます。一度に20000本ものコンテナを運ぶことができる為、非常に効率性が高いです。一方、供給過多になりやすく、これが価格下降の圧力を強めています。
輸送価格も他の商品と同じく需要と供給のバランスにより決まります。需給バランスが崩れている場合は、価格の上昇や下降が置きます。
港湾の混雑状況
港湾作業の遅れ、混雑により本船入港の他、通関以降の全ての作業が滞るときがあります。流行病の伝染による荷役作業の中断又は、減少したときが典型です。他、労働争議権が強い国は、港湾作業者によるストライキ等が発生することがあります。
これら港湾の混雑による影響を受けて入港遅れ等が発生し、結果、それらの諸費用が運送費やその他のサーチャージとして返ってくることも多いです。
国際情勢
ある国と国の戦争により、航路が封鎖されてしまった。これを避ける為、代替ルートを通るために余分に費用が掛かるなどもこともあります。特に中東地域は、紛争が起きやすく2024年現在も海賊が存在する所でもあります。当然、それらをリカバリーする為の費用がかかります。
例えば、貿易保険をかける場合は、カントリーリスクに応じた保険料が必要です。政情が不安定になると、当然、保険料は高くなります。保険料が高くなる地域は、当然、海上運賃も高くなります。
このように海上運賃が上昇する理由は様々にあります。これらの要素とフォワーダーと荷主の長期的な取引実績によって、最終的に負担することになる海上運賃が決まります。
海上運賃の計算方法
では、どのように海上運賃を計算するのでしょうか?
船会社、フォワーダーには、航路毎に基本的な料金を持っています。但し、既述の通り、海運同盟の時代とは異なり、基本的には、輸送費は市場原理の下で決まります。元々、輸送費は原価があってないような物です。海上運賃は、船社やフォワーダーごとに戦略的に決まることが多いです。
例えば、この荷主は、輸送頻度が高いのでベース部分を安くする。この荷主は、頻度が低いのでベース料金を高くするなどです。したがって、荷主の立場で、この航路だといくらくらい~。この国へはいくらくらいなどと知ることは難しいです。
同じ航路、同じ物量でも荷主毎に大きな価格差があることも多いです。また、お付き合いするフォワーダーの力(仕入れ力)によっても提案される海上輸送費に大きな違いがあります。
海上運賃(コンテナ輸送)の計算方法は、2つに大別される。
コンテナ輸送代金が記載されているアライバルノーティスの事例を2つほどご紹介します。
- コンテナ輸送費における計算方法
- コンテナ未満輸送における計算方法
1.コンテナ輸送費における計算方法
コンテナ輸送における海上輸送費の計算方法は、コンテナ単位で課金されます。(20フィートや40フィート1本分価格)コンテナ輸送におけるアライバルノーティスは、以下のような記載です。
コンテナ輸送費は、コンテナ1本あたりで費用が設定されています。
2.コンテナ未満輸送における計算方法
コンテナ未満輸送における計算方法は、次の通りです。
以下の場合、全体の物量は、1.7 R/Tです。それぞれの単価に対して、この1.7をかけます。
例: CFS CHARGE 5500円 R/T= 5500×1.7=9350円
この9350円に相当する部分を合計すると、最終的に支払うべき費用がわかります。なお、重ねていいますが、単価部分は、同じ航路(路線)でも、フォワーダーによって大きく違います。
コンテナ未満輸送では、R/T又はM3あたりで単価が設定されている。この単価と合計容積をかけてでてきた費用を合計します。
運賃とインコタームズの関係
海上運賃とインコタームズには、密接な関係があります。インコタームズとは、貿易における売り手側と買い手側のするべきことを「取引条件の型」として決めています。この型には、次の物が決められています。
- 国際輸送費をどちらが負担する?
- 海上保険は、どちらがかける?
- 輸出又は輸入通関はどうする?
- 国内輸送費はどうする?
- 貨物が壊れたらどうする?
- 貨物が壊れた場合の責任は、どちらが負担する?
などです。インコタームズでは、これらの責任範囲、費用負担を11の型として定義しています。輸出者と輸入者は、これらからどれか一つに合意することで、お互いの責任範囲を明確にしています。
例えば、FOBなら、買い手は国際輸送費と海上保険などを自らの費用負担と責任により行うとされています。この場合、売り手は、輸出国側の本船に船積みする迄が責任の範囲です。
既述の通り、インコタームズは、国際輸送費の負担者も決めています。したがって、インコタームズによって、あなたが輸送費を負担するべきか? 相手が輸送費を負担するべきか?が決まります。
輸送費とインコタームズには密接な関係があります。
海上運賃の見積もりと比較
海上運賃の見積もりは、どのように取り寄せればいいのでしょうか?
まず大切なことは、見積もり依頼する先は、キャリアではなく、フォワーダーであることです。日本には、有名な船会社がありますね? ONEなど。これらキャリアに直接、見積もり依頼をすることもできます。但し、その結果はあまり芳しくないです。理由は、規模感です。
例えば、月に40フィートコンテナを100本以上扱っている~。それが何年もずっと継続して行わているなら、直接契約をしても意味があるかもしれません!又は、東証一部上場企業などのある一定の信用がある会社であれば、キャリアとしても相手にしてくれると思います。もし、それ以外の企業に該当なら、迷わずフォワーダーに依頼することをお勧めします。
フォワーダーに見積もり依頼をする方法
フォワーダーは、フレイトフォワーダーズ協会で探してみましょう。又は、「フォワーダーランキング」からも方面別、得意な分野別にフォワーダーを見つけられます。
最近は、フォワーダー業界にもDX化の波が押し寄せています。業者によっては、LCL(コンテナ輸送)、FCLなどの全ての輸送形態の見積もりをオンラインで簡単に取り寄せられる所もあります。もちろん、出荷管理、担当者の指示、出荷後の追跡、昨年度との輸送料の比較などもシステム上でできる所が増えています。それらの会社に見積もりを依頼すると良いと思います。
フォワーダーに見積もり依頼するときの項目
フォワーダーに見積もり依頼をするときは、以下の項目をまとめます。情報がまとまっている程、フォワーダーとしても良い対応をしてくれます。(真剣に対応)遊び半分やフラッと依頼している。とりあえず感が強く感じる案件は、無視することも多いので気を付けましょう!
あなたからの見積もり依頼に真剣さがあるほど、フォワーダーは対応してくれます。
基本情報 |
|
出発地と到着地 |
|
輸送日程 |
|
貨物の詳細 |
|
貨物のサイズと重量 |
|
コンテナの種類と数量 |
|
必要書類は準備できている? |
|
サービス |
|
コンテナ輸送で必要な書類:輸出入の手続きをスムーズに進める!
海上運賃の管理と最適化
最後に海上運賃の最適化するためのポイントをご紹介します。フォワーダーは、最低3社と取引関係を続けると良いです。一社とだけ取引をしていると、想定外の事態になったとき(例:流行病など)スペースを確保できないなどの状況になりかねないからです。
他、複数の会社と契約しておくことで、輸送価格の相場観を維持できる点も重要です。長期的に強固な関係を築くことは素晴らしいことだと思います。それにより少しずつ輸送料金等が下がるようになれば、お互いにとって良いことです。
しかし、長期安定な関係となれ合いは違います。会社と会社は、ビジネスであることを忘れてはいけないです。最低、一年に一回は、運賃交渉をして、自社への輸送価格が適切であるのか確認します。
もし、既存の契約企業に怠慢等が見つかれば、新しいフォワーダーに乗り換える又は、輸送を依頼する比率を下げるなどの工夫が必要です。新しいフォワーダーに依頼する際は、スポット契約と長期契約を使い分けて考えます。
まず、スポット契約で輸送契約をして、フォワーダー候補の価格力、対応力などを確認します。その後、問題がないと判断できた場合に長期的な契約をします。長期契約は、フォワーダーにとっても継続的な収益をもたらすため歓迎されやすいです。スポット契約による価格よりもずっと優遇してくれる可能性が高いため、必ず交渉しましょう!
コンテナ輸送に限らず、どんな商品・サービスも複数の会社と取引をすることが大切です。結果、これが輸送の最適化につながります。