国際輸送を依頼する際、海運会社の財務状況を確認することは非常に重要です。過去、韓進海運のように経営破綻した企業があるからです。しかも、海洋上での突然の破産です。入港拒否、積み荷の差し押さえなども事故でもあります。
本記事では、国際輸送を依頼する際、その海運会社を選んでよいのか?を主に海運会社の財務状態から判断する方法を説明していきます。
Hanjin Shipping(2016年)負債5,000億円!経営破綻による物流混乱
海運会社の財務状況を確認する重要性
2016年、韓進海運は、経営破綻し、世界中の港でコンテナ船が立ち往生しました。この影響で積み込まれた貨物の行方が不明になり、港湾でコンテナの引き取りができず長期間放置される事態が発生。さらに、荷主には保管料や再輸送費用などの追加費用が発生し、多くの企業が大きな損失を被る結果となりました。
韓進の経営破綻時に荷主がしなければならなかったことの一例
- 破綻直後に自社の貨物が影響を受けるかを確認
- 韓進海運のコンテナ船がどの港に停泊しているか確認
- 取引先やフォワーダーに連絡を取り、貨物の状況を確認
- フォワーダーを利用して代替輸送手段を検討
- 荷主協会や業界団体からの情報提供を受け、今後の対応を検討
- 韓国政府や港湾当局の発表を注視し、荷物の引き取りが可能か確認
- 税関と調整を行った。
- 取引していた保険会社に連絡し、保険の適用範囲を確認
- 保管費用や遅延による損害を最小限にするための交渉
- 商社や物流業者と連携し、代替の輸送ルートを確保
- 契約解除手続きや、新たな輸送契約の締結を進めた
- 法的措置を検討し、未払いの輸送費や損害補償の回収方法を確認
- フォワーダーとの長期契約を見直した
- 影響を受けた顧客に対して状況説明をし納期調整をした。
など、突然の経営破綻により、非常に多くの影響がありました。今後、このようなことに巻き込まれるのを防ぐためには、ある一定のレベルで、海運会社の財務状況を把握しておくことが重要だと言えます。
財務が不安定な海運会社の4つの特徴とは?
何を見れば、その海運会社の財務状況が健全だと言えるのでしょうか? 最低限、以下の4点を確認しておくと良いと言われています。
- 負債比率が極端に高い
- 営業利益が赤字続き
- キャッシュフローが不安定で運営資金が不足しやすい
- 過去に政府支援を受けていた企業は経営基盤が脆弱
主要海運会社の決算情報(2024年)
日本郵船
売上高2兆3,872億円、営業利益1,746億円、経常利益2,613億円、純利益2,286億円を計上しており、安定した利益を確保しています。
商船三井
売上高1兆7,000億円、営業利益2,000億円、経常利益2,500億円、純利益2,000億円を報告し、財務健全性が非常に高いことがわかります。
川崎汽船
直近の業績は安定傾向にあります。
デンマークのA.P. モラー・マースク
売上高30億5,000万ドルを記録し、収益改善が進んでいます。
ドイツのHapag-Lloyd
前年比47%の収益減少が報告されましたが、輸送量は増加しています。
韓国のHMM
純利益3,900億円を記録し、韓進海運の破綻後に再生した企業として安定した成長を見せています。

後述する、政府の財政支援を受けてきた海運会社です!
どの海運会社に輸送を依頼すべき? 海運会社の財務体質の安定を確認するための確認するべきポイント(貿易業者向け)
国際輸送の依頼をしても良いのか?を判断するための最低限確認をしておきたいポイントをご紹介します。 株式投資をするわけでないので、最低限の指標をチェックしておくだけで十分だと思います!
- 営業利益の推移
- 負債比率
- キャッシュフロー
- 自己資本比率
- 長期負債の増加
- 政府支援の有無
1.営業利益の推移
過去数年にわたり安定して黒字かどうかを確認しよう!赤字が続く場合、事業の継続性に不安があります。
2.負債比率
借入金が多すぎると資金繰りが悪化。負債の比率が極端に高い場合は注意です。
3.キャッシュフローの安定性
営業キャッシュフローがマイナス続きの場合、日々の運転資金に問題がある可能性が高いです。
4.自己資本比率
自己資本比率が低すぎると、経営の安定性に不安があります。
5.長期負債の増加傾向
直近で急激に長期負債が増加していないか確認しましょう!
6.政府支援の有無
過去に政府の財政支援を受けたことがあるかを調査します。

荷主としては、財務が健全な企業を選ぶことが重要です!
本業の邪魔にならない財務情報の確認方法
本業が忙しい中で海運会社の財務情報を確認するのは負担です。最も簡単に各社の財務健全性を調べるにはどうしたらいいのでしょうか?
- 公式ウェブサイトのIRページ
- Yahoo!ファイナンス
- Bloombergなどの経済ニュースサイト
- 「EDINET(エディネット)」で有価証券報告書を確認
などを確認するのが良いと思います。これでも時間が取れない場合は、海運業界の最新ニュースをフォローするのも有効です。業界専門誌や貿易関連のニュースサイトでは、主要海運会社の業績や市場動向についてまとめられているため、日々の業務に負担をかけずに必要な情報を得られます。
海運会社の破綻リスク対策 フォワーダーを使うメリットは?
実は、船会社の財務体質を確認する共に、国際輸送の依頼をフォワーダーに対して行うことことが最大のリスク対策として有効です。
- 船会社←荷主
- 船会社←フォワーダー←荷主
2番の依頼方法をとることで、万が一、緊急事態が発生した際もフォワーダーの責任の下、事態に対処することができます。力があるフォワーダーであれば、すぐに代替ルートを確保してくれるなど。
これは、輸送契約は、あくまでフォワーダーとの間で行っているからです。フォワーダーは、荷主に対して輸送に関する責任を負っています。よって、荷主は、本当の輸送者(船会社)が倒産しても一次的には関係がないです。(損失上のお話)貨物が届かなくなる点は非常に大きな影響を受けることは間違いないです。

但し、上記の場合は、フォワーダーの財務健全性が重要になります!
海上保険でリスクを下げることも重要
海上貨物保険の適用範囲を事前に確認し、万が一の経営破綻や事故による損害をカバーできるようにすることが大切です。
ところで、フォワーダーに対して使用する海運会社をリクエストできる?
フォワーダーに貨物(コンテナ)輸送を依頼する際、特定の海運会社を指定できるかどうかは、契約の種類やフォワーダーとの関係によって異なります。
1.基本的には指定できない
フォワーダーは独自の契約とネットワークを活用し、最適なルートやコスト効率の良い海運会社を選定します。そのため、基本的には荷主が海運会社を指定することは難しいです。
2.FOBやEXWの場合はフォワーダーが主導する
FOBやEXWの条件では、輸出者や輸入者がフォワーダーを手配するため、フォワーダーが持っている契約範囲で選ばれた海運会社が使われます。
3.特定の海運会社の利用を相談することは可能
フォワーダーによっては、事前に「この海運会社を使いたい」と相談することで対応できる場合もあります。ただし、料金が高くなる可能性があります。
4.FCL(Full Container Load)の場合は指定しやすい
FCL輸送では、特定の船会社を利用するリクエストが通りやすいです。LCLの場合は他の荷主と混載するため、船会社の指定は難しくなります。
5.契約上の「キャリア指定(Carrier Selection)」オプションを確認
フォワーダーとの契約によっては、特定の海運会社の利用を条件として交渉できる場合があります。特に大口荷主は交渉の余地があります。
6.長期契約を結んでいる場合は指定可能なことも
自社で定期的に輸送を行う場合、特定の海運会社と直接契約することでフォワーダー経由でもその会社を利用できるケースがあります
まとめ
- 海運会社の経営破綻は荷主に大きな影響を与える
- 事前に財務状況を確認することが重要
- 対応力があるフォワーダーを活用しよう
- 海上貨物保険すること
- 代替輸送ルートを想定しておくこと
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