国際輸送では、コンテナ船やタンカーが安定して航行するために「バラスト水」が重要な役割を果たします。しかし、このバラスト水が環境問題の原因となる側面もあります。
この記事では、バラスト水の基本的な仕組み、環境への影響、国際規制、適切な対策までを分かりやすく解説します。
バラスト水とは?
バラスト水とは、船のバランスを保つために海水を船内のタンクに取り込み、排出する水のことです。特に貨物を積んでいない状態の船は軽くなりすぎて安定性を失うため、適切な重さを確保する目的でバラスト水を使用します。
例えば、輸出港でコンテナを積む前の船は軽い状態なので、バラスト水を満たして安定させます。その後、目的地に到着しコンテナを降ろした際にバラスト水を排出することで船のバランスを調整します。
バラスト水が環境に与える影響
バラスト水は、異なる海域の水を吸収・排出するため、海洋生態系に大きな影響を与えます。主な問題点は以下の通りです。
1.外来種の拡散
バラスト水にはその地域の海水生物(プランクトンや小型生物など)が含まれています。このバラスト水が別の地域で排出されると、本来その地域にはいなかった外来種が定着し、在来種の生態系を破壊する恐れがあります。
2.有害な微生物の拡散
バラスト水には病原菌や細菌が含まれていることがあり、これが別の地域の海域に放出されることで、魚や貝類に影響を与える可能性があります。
3.水質汚染のリスク
バラスト水には燃料や重金属が含まれることがあり、排出先の海域の水質汚染を引き起こすことがあります。特に、港湾地域ではこれが問題視されています。
4.国際的なバラスト水規制
環境への影響を防ぐため、国際的にバラスト水の管理を強化する動きが進んでいます。代表的な規制として「バラスト水管理条約(BWM条約)」があります。
バラスト水管理条約(BWM条約)
BWM条約(Ballast Water Management Convention)は、国際海事機関(IMO)が2004年に採択し、2017年に発効した規則です。この条約により、一定の基準を満たしたバラスト水処理システムの導入が義務付けられています。
主な内容は….
- バラスト水の排出基準を満たすこと
- 指定されたバラスト水処理装置を設置すること
- バラスト水の記録簿を保持すること
などが定められています。
バラスト水管理の対策と今後の動向
バラスト水による環境問題を防ぐために、各国や海運会社はさまざまな対策をしています。
バラスト水処理装置の導入
多くの船舶がバラスト水の中の生物や病原菌を除去するための処理装置を導入しています。
陸上でのバラスト水処理
船舶内で処理するのではなく、専用の設備を備えた港でバラスト水を処理する方法も検討されています。
参考情報:貿易業者が知っておくべきポイント
輸出入に関わる荷主は、バラスト水規制が影響を及ぼす可能性があることを理解しておく必要があります。
例えば、規制を満たしていない船舶を使用すると、遅延が発生することがあるため、フォワーダー等に対してバラスト水の管理状況を確認することが重要です。
まとめ
バラスト水は、船舶の安定性を確保するために欠かせないものです。しかし、環境への影響があるのも事実です。今後、国際輸送においてバラスト水の規制が強化されており、荷主や輸出入業者もこの問題を無視することはできません。
今後、環境保護と安全な輸送の両立が求められる中で、船舶のバラスト水管理がますます重要になっていくでしょう。
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