国際航空輸送では、高高度の乾燥した環境が貨物に与える影響を無視できません。特に、果物や野菜、花卉(かき)などの水分含有量が高い製品は、湿度低下によって品質が劣化しやすくなります。適切な湿度管理が行われない場合、鮮度が失われたり、外観が変化したりして、消費者に届くまでに大きなダメージを受けることがあります。
この記事では、航空輸送中の湿度低下による問題と解決策について詳しく解説します。
航空輸送における湿度管理の重要性とトラブル事例
航空輸送における湿度低下の影響
飛行機の貨物室は気圧調整が行われていますが、一般的に湿度は20%以下になることが多く、極度に乾燥した環境となります。この影響により、以下のような問題が発生します。
1.果物・野菜の水分蒸発による品質低下
水分含有量が高い果物や野菜は、輸送中に水分が急速に失われ、到着時には外観が変色したり、シワが寄ったりすることがあります。特に、ブルーベリーやイチゴなどの小さな果物は乾燥の影響を受けやすく、重量が減少することもあります。
2.生花のしおれや変色
カットフラワーや観葉植物は湿度の影響を大きく受けます。特にバラやユリなどの繊細な花は、乾燥すると花びらが傷みやすくなり、色あせることがあります。湿度不足は、花の鮮度と美観を損ね、販売価値を大きく下げます。
3.医薬品・化粧品の成分変化
ジェル状や液体の医薬品・化粧品は、極度の乾燥環境にさらされると成分が変化する可能性があります。特に、水分を含んだ製品は蒸発し、粘度が変化することで品質が損なわれることがあります。
航空輸送で発生した湿度管理トラブル事例
事例1:ブルーベリーの乾燥による重量減少
ある輸出業者が新鮮なブルーベリーを航空輸送した際、到着時に重量が5%減少し、見た目も乾燥してしまい市場価値が下がりました。これは、高高度の乾燥した空気による水分蒸発が原因でした。
事例2:南米産のバラが変色し販売不能に
南米からヨーロッパへ空輸されたバラが、到着時に変色しており、茎が乾燥して折れやすくなっていました。航空機の貨物室内の湿度が低すぎたため、花が水分を失い、しおれてしまったのです。
事例3:高級スキンケア商品のテクスチャー変化
アジアから北米へ輸送されたスキンケアクリームが、到着後に粘度が変化し、顧客からのクレームが発生しました。これは、乾燥した環境で水分が蒸発したことが原因でした。
航空輸送中の湿度低下を防ぐための対策
湿度低下による貨物の品質劣化を防ぐためには、以下の対策が有効です。
1.保湿対策を施した梱包を行う
貨物を輸送する際は、水分蒸発を防ぐための梱包方法を採用することが重要です。
- プラスチックフィルムや密封パックを使用し、水分を閉じ込める
- 保湿ペーパーやゲルパックを同梱し、貨物内部の湿度を維持する
- 防湿性の高い包装材を使用し、外気の影響を最小限に抑える
2.湿度管理が可能な貨物スペースを選択する
一部の航空会社では、湿度を調整できる貨物スペースを提供しています。特に、医薬品や生鮮食品の輸送には、湿度管理が可能な専用コンテナを利用しましょう!
3. 湿度調整剤の活用
貨物内部の湿度を一定に保つために、湿度調整剤を使用するのも有効な方法です。
例えば….
- 吸湿ジェルを使用し、必要な湿度レベルを維持する
- 加湿紙や吸湿パッドを貨物内部に配置することで乾燥を防ぐ
などが有効です。
4.短時間での輸送ルートを選択する
湿度低下の影響を最小限に抑えるためには、輸送時間を短縮することが重要です。可能な限り直行便を利用し、トランジットによる貨物の待機時間を減らすことで、乾燥環境への露出を最小限にできます。

直行便の利用は最適解です。できるだけトランジットがない輸送が良いでしょう。
まとめ
航空輸送における湿度低下は、果物・野菜、生花、医薬品、化粧品などの品質に深刻な影響を与える可能性があります。高高度の乾燥した空気によって水分が蒸発し、商品価値が大幅に低下することがあります。これを防ぐためには、適切な梱包と保湿対策、湿度管理が可能な貨物スペースの利用、湿度調整剤の活用、輸送時間の短縮などが重要です。