国際輸送において、コンテナ船の事故は決して珍しいものではありません。悪天候や操船ミスによってコンテナが海へ流出すると、それらが沿岸に漂着し、地元住民による略奪行為が発生することがあります。過去には、イギリス、オランダ、ニュージーランドなどで、貨物が沿岸に打ち上げられ、それを地元住民が持ち去るケースが起きました。
この記事では、コンテナ船の事故による略奪の実情と、荷主が取るべき具体的な対策について解説します。
コンテナ船事故時に発生する略奪行為の実態
1. なぜ略奪が発生する?
コンテナ船の事故によって流出した貨物は、しばしば沿岸に漂着し、地元住民によって持ち去られることがあります。特に、事故が起きた地域が観光地や人が集まりやすい場所の場合、SNSなどで情報が拡散され、多くの人々が押し寄せます。
このような略奪行為が発生する背景には、以下の要因があります。
- 「落ちているものは拾ってもいい」という誤った認識:多くの人が「海から漂着したものには所有権がない」との勘違い。
- 貨物の価値:電化製品や食品、衣料品などの高価な商品が流出した場合、持ち去る動機がより強くなる。
- 法的な取り締まりの甘さ:一部の国では、漂着した貨物の所有権を明確にする法律が整備されておらず、取り締まりが困難である。

但し、多くの場合、漂着した貨物には依然として荷主の所有権があるとされています!
2. 実際に発生した略奪事件
これまでに発生したコンテナ流出事故では、略奪行為が報告されています。
- MSC Napoli(2007年)事故(イギリス):イギリス南西部のデボン州に漂着し、多くの住民がバイク、テレビ、ワインボトルなどを持ち去る。
- Rena(2011年)事故(ニュージーランド):座礁したコンテナ船から流出した家具や食料品が地元住民に略奪された。
- Maersk Shanghai(2018年)事故(アメリカ):貨物がノースカロライナ州のビーチに打ち上げられ、テレビや衣類を持ち帰る様子が撮影された。

ブラジル・サントス沖(2017年)の事例では、住民が「海賊」と化してコンテナを略奪したことが報告されています。
荷主が取るべき対策とリスク管理
1. 海上貨物保険の適用範囲を確認する
コンテナが事故で流出した場合、海上貨物保険によって補償されるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。保険契約の内容によっては、「漂流後の盗難は対象外」とされていることがあります。
2. 貨物のトラッキングシステムを活用する
近年では、コンテナ内にGPSトラッカーを設置し、貨物の位置をリアルタイムで監視できる技術が発展しています。特に高価な貨物を輸送する場合、万が一の事故に備えて、コンテナの位置情報を記録し、回収の手がかりとすることが有効です。
3. 地元当局や港湾管理者と連携する
事故が発生した際に、すぐに現地の港湾管理者や海上保安機関に連絡し、貨物の保護を依頼することが重要です。
4. 迅速な情報共有と対応
事故発生後は、SNSやニュースで迅速に情報が拡散されるため、荷主や船会社も早急に情報を発信し、貨物の回収に協力を求めることが有効です。場合によっては、地元住民に対し、貨物の所有権を明確に伝えるといいでしょう。
5. 盗難防止措置の強化
貨物の種類によっては、盗難防止対策として特殊な封印(シール)や耐久性の高いコンテナを使用することも有効です。特に、高級品や貴重品を輸送する場合は、二重のセキュリティ施策を検討するべきです。
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現実的な考え方
基本は、略奪行為が始まったら、それを防ぐ手立てはないと考えた方がいいでしょう。したがって、商品自体の回収は、困難だと考える方が現実的です。よって、この場合は、その損失額を少しでも小さくするための保険戦略にあると考えるべきです。万が一、略奪行為により貨物が盗難された場合、補償の対象になるのか?対象になる場合は、どれほどの割合が補償されるのかを確認すると良いでしょう。
まとめ
- コンテナ船の事故時には、流出した貨物が地元住民によって略奪されるケースがある。
- 過去の事例では、MSC Napoli(2007年)、Rena(2011年)、Maersk Shanghai(2018年)などの事故で略奪が発生した。
- 荷主が取るべき対策として、海上貨物保険の確認、GPSトラッキング、地元当局との連携、迅速な情報共有、盗難防止措置の強化が挙げられる。
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