スプリットシップメントとは?
国際輸送で「スプリット(Split)」という言葉を耳にすることがあります。
しかし、実務の中では「Split B/L(分割船荷証券)」と「Split Shipment(分割船積み)」の二つの意味で使われることが多く、混同されやすい用語です。本記事では、それぞれの定義と実務上の注意点を整理します。
スプリットB/L(Split B/L)とは
スプリットB/Lとは、1本のB/L(船荷証券)を複数に分けて発行する手続きを指します。必要になるのは以下のケースです。
- 貨物を複数の受取人に分けて引き渡したい場合
- 信用状(L/C)の条件を満たすために分割が必要な場合
手続きの流れは、船会社やフォワーダーに依頼し、追加費用(B/L再発行料など)が発生します。出港後のスプリットは制限が強く、受け付けないキャリアも多いため注意が必要です。また、運賃条項(Freight Collect/Prepaid)や荷受人のインボイスとの整合性に注意する必要があります。
スプリットシップメント(Split Shipment)とは
スプリットシップメントとは、貨物を一度の船積みにまとめられず、複数便に分けて輸送することです。必要になる場面は次の通りです。
- 生産の遅れで全量を一度に出荷できない
- 信用状(L/C)条件に「スプリットシップメント可/不可」と明記されている場合

スプリットシップメントになると、運賃や書類の発行回数が増えるほか、輸入国で税関申告やD/Oフィー、通関費用が複数回発生し、コストが増加します。輸入側のコスト負担が増える点も実務上の大きな注意事項です。
Partial Shipmentとの違い
類似用語に「Partial Shipment(部分船積み)」があります。
- Partial Shipment:発注数量を複数回に分けて輸送すること(異なる船・異なる時期)
- Split Shipment:同じ注文貨物を複数の船、あるいは同一船内の複数コンテナやフライトに分けて積むこと
銀行実務(L/C取引)では両者の区別が曖昧になることがあり、UCP600 第31条の「Partial Shipment」規定を根拠に解釈されることがあります。=信用状取引では注意が必要です。
参考情報:航空貨物における「Split」とは?
実は、海上輸送だけでなく、航空貨物でも「Split AWB(分割航空運送状)」の概念があります。1件のAir Waybillを複数便に分けるケースで、現場では海上のSplit Shipmentと混同されることがあるため、補足として理解しておくと実務に役立ちます。
スプリットに関するトラブル事例
- B/Lを分割したが、どのB/Lで貨物を引き取るか不明確となり通関が遅延
- スプリットシップメントによりL/C不適合となり、決済が行えなかった。
- 船会社に依頼したが「スプリット不可」とされ、貨物引渡しに支障が生じた。
契約・規制の視点
スプリットに関して参照すべき規則・契約は以下です。
- 信用状規定(UCP600 第31条:Partial Shipment):分割船積みの可否を明確に!
- キャリア・フォワーダーのB/L発行規則:Split B/Lの可否や条件を規定
- NVOCC標準約款:分割に関する制限や責任範囲を明記

Hague-Visby Rulesは、キャリア責任全般の規定であり、スプリット可否の直接的な根拠にはなりません!この点を混同しないようにしましょう!
実務者へのアドバイス
- 出荷前に「B/Lを分割する可能性があるか」を確認しておきましょう。
- L/C条項で「分割船積み可/不可」を必ずチェックしましょう。
- Split ShipmentとPartial Shipmentの違いを理解し、L/C取引に反映しましょう。
- 船社・フォワーダーごとにルールが異なるため、事前確認を徹底しましょう。
- トラブル発生時は、追加費用や責任範囲を文書で明確にしましょう!
まとめ
- Split B/L=1枚のB/Lを複数に分割発行(書類処理の問題)
- Split Shipment=貨物を実際に複数船/便に分割(輸送上の問題)
- Partial Shipment=注文数量を複数回に分ける(時期・便が異なる)
三者は似ているが意味は異なり、誤解すると大きなトラブルにつながります。実務リスクは書類面と輸送面で性質が異なるため、L/C条項・契約条項・キャリア規定を必ず確認することが重要です。
要点
- Split B/L=B/Lを分割発行する手続き
- Split Shipment=船積みを複数便に分けること
- Partial Shipment=数量を複数回に分けて輸送すること
- コストや通関回数の増加に注意
- 根拠はUCP600第31条や船社ルール、NVOCC約款