輸入許可が下りない!?滅却か積戻しか?賢い判断基準とは?

国際輸送された貨物が輸入許可を得られず、滅却または積戻し(シップバック)の選択を迫られることがあります。この際、どのように判断すればよいのか、基本的な制度から具体的な対応策まで詳しく解説します。

輸入許可を得られない理由

輸入許可が下りない理由には、日本の法令や安全基準に適合しないこと、禁制品や輸入制限品に該当すること、許可証や必要書類の不備、課税価格の申告ミスなどがあります。最終的に輸入許可がされない場合、輸入者は、関税法に基づく「滅却」または「積戻し」のいずれかを選択することになります。

  1. 関税法45条=滅却
  2. 関税法75条=積戻し(シップバック)

根拠法令:関税法

関税法第45条・滅却

関税法第45条では、輸入許可を得られない貨物を税関の指示に従って滅却(処分)することが認められています。

滅却とは、貨物を完全に処理することであり、多くの場合、焼却や埋立処理が行われます。この破棄は「焼却等により貨物の形態をとどめなくすること」と定められており、商品価値がゼロになるまで完全処理されます。

滅却のメリット

  • 迅速に処分でき、長期保管によるコストが発生しない。
  • 商品の市場価値を下げるリスクを回避できる。
  • 運送費用をかけずに処理できる。

滅却のデメリット

  • 滅却費用が発生し、場合によっては高額になる。
  • 価値商品を完全に失うことになる。
  • 一度滅却すると、取り戻せない。

例:金属製製品を処分する場合

  • 1.破棄=鉄くず(鉄くずとしての商品価値が残存)
  • 2.滅却=鉄くずの価値すらないように処理

滅却には費用が発生しますが、日本国内での違法な流通を防ぐために必要な措置です。

関税法第75条・積戻し(シップバック)とは?

関税法第75条では、輸入が認められない貨物を原産国または第三国へ戻す「積戻し」が規定されています。これにより、貨物を国外への再輸出の選択もできます。

積戻しは、商品が高額である場合や、日本以外の市場で販売できる可能性がある場合に選ばれることが多いです。

積戻しのメリット

  • 高額な貨物の場合、損失を最小限に抑えられる。
  • 原産国や第三国で販売することで、商品の価値を維持できる。
  • 滅却費用が不要であり、処分コストを抑えられる。
  • 法規制の異なる国での再輸入の可能性がある。

積戻しのデメリット

  • 売り手が受け入れてくれないことが多い。
  • 追加の輸送費用や手続きコストが発生する。
  • 原産国や第三国での再輸入が必ずしも保証されるわけではない。
  • 貨物の保管期間や手続きの遅れによる時間的ロスが生じる。
  • 顧客への納品遅延やブランドイメージへの影響がある。

滅却と積戻しの判断基準は?

滅却と積戻しのどちらを選択すべきかは、貨物の価値、処理にかかる費用、輸出先の選択肢、時間的な制約、企業のブランドイメージなどの要素を総合的に考慮します。

  • 高額な商品=積戻し
  • 低価格または流通価値が低い場合=滅却

と、選択するのが一般的です。また、滅却費用は商品によって異なり、産業廃棄物扱いになると高額になることもあります。積戻しの場合、輸送費用がどれくらいかかるのかを事前に確認することが重要です。

主な滅却処分業者の紹介

日本国内には多くの滅却処分業者があり、貨物の種類に応じて適切な処理を行う必要があります。代表的な業者として、産業廃棄物処理を専門とし、医薬品や食品、電子機器などの滅却に対応する業者や、環境負荷を最小限に抑えた滅却処理を行うエコロジーサービス、空港や港湾での滅却処分を代行するロジスティクス企業などがあります。これらの業者を活用することで、スムーズに処理を進めることができます。

但し、実務上は、お付き合いする通関業者に滅却処分を依頼することが多いです。

まとめ

輸入許可が下りず、滅却または積戻しの選択を迫られた場合、貨物の価値や処理費用、市場の可能性を考慮することが大切です。滅却は確実な処分方法ですが、積戻しによって損失を最小限に抑えられる場合もあります。判断に迷った際は、専門業者やフォワーダーに相談し、最適な選択を行うことが望ましいでしょう。

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