国際輸送において、貨物の輸送をスムーズに進めるために発行される「ハウスBL(House Bill of Lading)」ですが、複数発行されることで思わぬリスクが発生することがあります。特に、貨物の所有権や受け取りに関わるトラブルが生じやすいため、注意が必要です。
本記事では、ハウスBLを複数発行するリスクについて解説します。
ハウスBLの複数発行リスク
ハウスBLとは?
ハウスBLとは、フォワーダー(貨物利用運送事業者)が発行する船荷証券です。船会社が発行するマスターBL(MBL)とは異なり、フォワーダーが荷主と直接やり取りする際に発行する書類です。
主な特徴は、次の通りです。
- フォワーダーが発行するBLであり、荷主とフォワーダー間の契約を証明
- 荷受人(Consignee)がフォワーダー経由で貨物を受け取るときに必要
ハウスBLの複数発行が引き起こすリスク
フォワーダーから、このハウスBLが複数発行されると、次の問題を引き起こすことがあります。
1.二重譲渡のリスク
ハウスBLが複数発行されると、同じ貨物に対して異なる受取人(コンサイニー)が指定されるケースがでます。特に、L/C(信用状)を利用する取引では、銀行がハウスBLを受け取り、その後別の取引先に譲渡することがあるため、貨物の所有権に関する争いが生じる恐れがあります。
2.貨物の引き渡しトラブル
輸送先の港で、どのBLを持つ荷受人が貨物を受け取るのかが曖昧になります。特に、BLを持たずに現地の業者が勝手に貨物を引き取る「無権限引き取り」のトラブルも発生しやすくなります。
3.支払いトラブル
ハウスBLの複数発行が原因で、売買契約上の支払いトラブルが起きることもあります。複数のBLが存在すると、銀行が信用状決済を拒否することもあります。
4. 運送責任の不明確化
ハウスBLを発行する際、運送責任の範囲が不明確だと、貨物事故が発生した際に誰が責任を負うのか?の判断しにくくなります。特に、複数のハウスBLが発行されていると、貨物の損傷時に保険会社の補償が受けられないリスクが高まります。
ハウスBLの複数発行を防ぐための対策
ハウスBLの複数発行によるリスクを避けるために、以下の対策が重要です。
1.フォワーダーと明確な契約を結ぶ
フォワーダーと契約を交わす際、BLの発行ルールを明確にし、同一貨物に対する複数発行を禁止する条項を盛り込むようにしましょう!
2.BL番号の管理を徹底する
発行されたハウスBLの番号を管理し、フォワーダーと荷主間でダブルチェックを行うことで、複数発行を防止できます。
3.マスターBLとハウスBLの整合性を確認する
フォワーダーが発行するハウスBLと、船会社が発行するマスターBLの内容を突き合わせ、相違がないことを確認します。
4.BLの電子化を活用する
最近では、BLの電子化(e-BL)を導入するフォワーダーが増えています。電子BLを利用することで、誤って複数のBLが発行されるリスクを低くできます。
まとめ
ハウスBLの複数発行は、貨物の所有権トラブルや支払い問題を引き起こすリスクがあります。事前にフォワーダーと契約を明確にし、BLの管理を徹底することで、これらのリスクを最小限に抑えられます。
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