越境EC時代のラストマイル物流|海外から“玄関まで届ける”現実と壁

越境EC時代のラストマイル物流

越境ECで注目される「ラストマイル」の現実とは?

越境EC(Cross-Border E-Commerce)の市場が急速に拡大する中、「ラストマイル物流」への関心も高まっています。ラストマイルとは、商品が消費者の手元に届く最後の区間、すなわち“玄関まで”の物流を指します。特に国をまたいだ輸送においては、税関手続きや現地物流業者との連携、関税・税制への対応など、国内物流とは異なる複雑な課題が山積しています。

このラストマイルをいかに効率的・確実に処理するかが、越境ECの成功を左右するといっても過言ではありません。

配送の現実:関税・遅延・現地配送との連携

ラストマイルの最大のハードルは、「関税・消費税対応」「現地配送業者との連携」「配送トラブル時の補償体制」です。

越境ECでは、商品が税関で止まったり、関税が高額に課せられたりするケースが多々あります。特にDHLやFedExなどを利用するエクスプレス便では、関税・消費税が高額になりやすく、消費者が「知らないうちに高額請求された」というトラブルも報告されています。

現地配送においては、各国の物流業者の品質差も問題になります。日本では常識とされている「配達の丁寧さ」や「再配達」は、海外では保証されていないことも多く、誤配送や盗難リスクも無視できません。

消費者視点:配達体験と受け取りの不安

ラストマイルの課題は企業側だけではなく、消費者側のストレスにもつながります。

例えば、関税の支払いが商品到着時に必要な「着払い方式」の場合、受け取り時に現金やカードが必要となり、トラブルが起きやすくなります。また、欧米では配達時の本人確認が必須とされる地域もあり、留守中に受け取れないと再配達に時間がかかります。

さらに近年では「宅配ボックス」や「スマートロッカー」の利用が広がっており、柔軟な受け取り手段を提供できるかが、ユーザー満足度を大きく左右しています。日本から越境ECを展開する事業者は、現地の受け取りインフラにも目を向ける必要があります。

サステナビリティと環境負荷の視点

越境ECにおけるラストマイルは、単にコストや利便性だけでなく、「環境負荷」という観点でも注目されています。航空貨物や長距離トラック輸送はCO₂排出量が高く、企業の環境責任(CSR)にも関わってきます。そのため、近年ではグリーン配送(電動車両の活用、集荷地点の最適化)などの取り組みが欧米を中心に広がっています。

テクノロジーが変えるラストマイル最適化

AIやIoT、ブロックチェーンなどの先端技術を活用し、ラストマイルの効率化を目指す動きも加速しています。AIは配送ルートの最適化や渋滞回避、IoTは荷物の温度管理・位置情報のリアルタイム追跡、ブロックチェーンは配送履歴の改ざん防止などに活用され始めています。また、スマートロッカーの普及により、無人での安全な受け取りが可能になってきました。

物流テック企業や大手ECプラットフォームは、これらの技術を導入し、配送の品質向上とコスト削減を同時に実現しようとしています。日本の荷主もこうした動向を積極的に学ぶ必要があります。

法制度の変化と最新の越境EC規制

近年、越境ECに関する税制や規制が各国で厳格化しています。

例えば、EUでは2021年から「VAT(付加価値税)の新制度」が導入され、22ユーロ以下の免税制度が廃止されました。また、米国では州ごとに「EC取引に対する州税」が課税されるようになっており、現地販売者登録(税登録)を求められるケースが増加しています。

日本国内でも、インボイス制度や電子帳簿保存法など、輸出入の事務処理に関する制度変更が進んでおり、企業は制度対応に追われています。越境ECを展開するには、国ごとの法制度の把握と対応が欠かせません。

成功・失敗事例から学ぶ

成功例として代表的なのが、Amazonの「グローバルフルフィルメント戦略」です。現地に倉庫を置き、商品を事前にストックすることで、注文後24時間以内の配送を実現。ローカル配送網を活用した高度なSCM構築により、圧倒的な顧客満足度を維持しています。

一方で、失敗事例としては、在庫を日本国内にしか置かず、発送が常に国際便となってしまうことで配送遅延が常態化し、返品・キャンセルが相次いだ中小ブランドのケースがあります。送料が高く、通関での遅延も多発したことで、信頼を失った典型例です。

まとめ:越境EC物流は“玄関の体験”で決まる

越境ECでは「商品を売る」だけでなく、「どのように届けるか」が成功を分ける鍵になります。関税処理の最適化、現地物流インフラの理解、消費者の受け取り体験への配慮、そして環境・規制・技術の変化への柔軟な対応が求められています。

越境ビジネスを成長させるためには、ラストマイルの設計を「物流」ではなく「マーケティングの一部」と捉え、消費者体験の最前線として戦略的に考えることが重要です。

記事のポイントまとめ

  • 越境ECのラストマイルは関税・通関・現地配送で課題が多い
  • 消費者側の受け取り体験(関税負担、配達方法)にも配慮が必要
  • サステナビリティ、AI・IoTなどのテクノロジー導入が加速中
  • 最新法制度(EUのVAT改革、インボイス制度)にも注意
  • Amazonや中小企業の事例から成功のヒントを学べる

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