国際的な航空貨物輸送は、企業の競争力を支える重要な物流です。しかし、時々、強制的に貨物が降ろされることがあります。(オフロード)
貿易者にとって納期通りに貨物を届けることは何よりも重要です。オフロードされると、納期遅延による顧客満足度の低下、緊急代替輸送に伴う追加コスト、さらには生産ラインの停止など、その影響は広範囲に及びます。
この記事では、航空輸送中の貨物を勝手に降ろす、オフロードの原因と実践的な対策について解説していきます。
予期せぬ貨物降ろし(オフロード)を防ぐための実践ガイド
国際的な航空輸送をしていると、時々、貨物を強制的に降ろされることがあります。当然、輸送契約は有効。料金も支払い済みです。であるにも関わらず、貨物が強制的におろされるのです。なぜでしょうか?
強制的におろされるとは?(オフロード)
航空機に貨物を搭載することがオンロード。この逆がオフロードです。オフロードが発生する可能性があるのは、特に多数の航空機が集まるハブ空港における積み替え時です。かつ、何らかの原因により、航空輸送スペースがひっ迫しているときに発生しやすいです。
例えば、数年前の流行病のときなどです。かつ、空港だと、ロンドンのヒースロー空港、ドバイ国際空港、香港国際空港などで発生しやすいです。これらの空港は、非常に混雑するため、オフロードされて、予定の航空機に積載されないことがあります。
また、シカゴ・オヘア国際空港(冬季の悪天候)、マイアミ国際空港(ハリケーンシーズン)などもオフロードされやすい空港と言えるでしょう。これらの空港は、気象条件の大幅な変化により、航空機の積載量制限が厳しくなり、結果、オフロードにいたります。
スペース問題が発生する主な要因
オフロードが発生する主な原因は、次の通りです。
- 積載容量の制限
- 構造的な制限
- 運航上の制約
1.航空機の積載容量制限
航空機には厳格な重量制限が設けられています。旅客機の下部貨物室(ベリー)では通常1500〜1800kg程度、貨物専用機の上部貨物室では2000〜3000kg程度が積載限度です。この制限を超える場合、安全性の観点から貨物の一部が降ろされることがあります。
2.貨物室の構造的特徴
航空機の貨物室は、機体の構造上、天井や側面が湾曲しているため、直方体の貨物でも効率的な積載が困難な場合があります。特に、ULD(Unit Load Device)からはみ出す形状の貨物は、特殊な搭載方法が必要となり、スペースの制約により降ろされるリスクが高まります。
3.運航上の制約
機材変更の影響
近年、中型機材の航続距離が増大し、直行便が増加傾向にあります。これにより、1機あたりの貨物搭載量が減少する傾向が見られます。急な機材変更が発生した場合、予定していた貨物の一部が搭載できなくなる可能性があります。
契約条件・優先順位(優先契約の有無)
航空会社は、様々な要因(契約条件、貨物の重要性、緊急性など)に基づいて貨物の優先順位を決定します。スペースが不足した場合、優先順位の低い貨物が降ろされる可能性があります。
優先順位は、様々な要因で決定します。
例えば、貨物による優先順位、荷主による順位が決まります。優先順位が低いほどオフロードされやすいです。
貨物による優先順位とは? オフロードされやすい貨物の特徴
- 一般的な商業貨物
- 大型または重量のある貨物
- 季節性の高い貨物
例えば、医薬品、救援物質、食料品などは、優先順位が高い貨物としての扱いを受けるため、オフロードされにくいです。
一方、スペースを消費しやすい大型貨物、重量物、特定の季節に集中する貨物(クリスマス商材など)、一般的な商業貨物は、オフロードされやすいです。
荷主による優先順位とは?
荷主による優先順位の違いもあります。これは、簡単に言うと、航空会社(キャリア)にとってのお得意様なのか? つまり、収益をもたらす顧客なのか?で判断しています。
- スポット的に依頼をする荷主の貨物
- 安い価格で輸送している荷主の貨物
などは、オフロードされやすいです。一方、年間を通じて一定の依頼をする荷主の貨物は、オフロードされにくいです。(収益をもたらす顧客)→フォワーダーなどの大口顧客
実践的な対策と解決策
オフロード対策は、以下の5つの方法があります。
- 早朝のブッキングを心がける。
- 貨物の大きさを最適化する
- 分割輸送を検討する。
- 海上輸送と併用する。
- フォワーダーとの関係を構築する。
1.早期のブッキングを心がける。
大型貨物や大量の貨物を輸送する場合は、少なくとも1週間前までにフォワーダーに以下の情報を提供します。
- 通常貨物:出発の5営業日前まで
- 大型貨物(パレット5枚以上):出発の7営業日前まで
- 特殊貨物(寸法超過、重量物):出発の10営業日前まで
- ピークシーズン期間:通常より3営業日程度、多く必要
2.貨物の大きさを最適化する。
ULDに適合する梱包は、オフロード問題に巻まれるリスクを小さくします。基本的に航空輸送は、標準的なULDサイズに合わせて輸送しましょう!重心点も計算し、ULD内で均等な重量になるように工夫します。
3.分割輸送の検討(時期、コンテナ、異なる航空会社)
大型貨物や大量貨物の場合、以下のような分割輸送が有効です。
- ピーク時期を避けた予約
- 異なる航空会社を活用する。
- ULDごとに優先度を管理する。
例えば、2つ以上のULDに貨物を搭載している場合に、最悪、オフロードされても良い方とされたくない方とに区別しておくことも有効です。
→AとBがあれば、Aのみをオフロードして、Bのみを載せてもらう等。
4.海上輸送と併用する。
緊急性が高い貨物と低い貨物を振り分けて、緊急性が低かったり、大型貨物だったりする場合は、海上輸送できないか検討します。
- 緊急性の低い貨物を海上輸送に振り分ける。
- 大型貨物の計画的に輸送する。
5.フォワーダーとの関係を構築する。
最も効果的な対策は、航空輸送に強いフォワーダーと長期で安定的な取引関係を築くことです。実は、これまで説明したどの対策よりも効果的です。
既述の通り、オフロードの対象となるのは、航空会社にとって優先度が低い荷主(収益性が低くい客)の貨物です。航空会社にとって、フォワーダーは、優先度が高い顧客です。
つまり、一般荷主は、フォワーダーを通して航空輸送のスペースを確保することで、直接、航空会社と輸送契約をする場合と比べて、オフロードされにくくなります。
- 年間契約の締結による優先スペースを確保する
- フォワーダーと定期的な情報交換をしよう!
- 輸送パターンの分析と最適化をする。
- 緊急時の対応プロセスを確立すること
まとめ
これらの対策は、単独で実施するのではなく、状況に応じて適切に組み合わせることで、より効果的なリスク管理が可能となります。特に、定期的な見直しと改善を行うことで、より強固な輸送体制を構築できます。
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