海上輸送におけるFCLとLCLは、輸送の方法としてよく利用されます。この記事では、FCLとLCLの意味、費用の違い、どのような場合に、どちらを選ぶべきかについて詳しく解説します。
FCLとLCLの違いを理解し、最適な輸送方法を選択する
FCLとLCLの意味
- FCL(Full Container Load)は、1つのコンテナを一つの荷主が専有して輸送する方法です。通常、大量の貨物を一度に輸送するときに利用します。
- LCL(Less than Container Load)は、複数の荷主の貨物を一つのコンテナにまとめて輸送する方法です。少量の貨物を輸送する場合に利用します。
コンテナの種類自体は、様々な物があります。
- 標準ドライコンテナ
- 冷蔵コンテナ
- タンクコンテナ
- 20 フィート
- 40 フィート
しかし、FCLやLCLは、種類の違いではなく、積み方の違いです。
FCLとLCLの特徴とメリット、デメリット
LCLの特徴
LCLは、一つのコンテナの中に複数の荷主の貨物を合積みする方法です。通常、一回当たりの輸送量が小さいときに利用します。
LCLのメリット
LCL (Less than Container Load) は、一回の出荷量が小さい荷主でも利用ができるのが魅力です。料金は、貨物量に応じた従量課金制の為、利用する分だけの費用を支払えばいいです。コンテナ一本分の物量を待たずに出荷できる点も良いです。
LCLのデメリット
LCLは、他の荷主の貨物と合積みするため、FCLよりも輸送リスクや遅延リスクが高いです。また、輸入港(目的地)でコンテナからの取り出しや仕分け作業が必要になるため、FCLよりも引き取りまでの時間が長いです。
FCLの特徴
FCLは、一つのコンテナの中に単一の荷主の貨物を入れて輸送する方法です。要は、一人の荷主が一つのコンテナを独占して使う方法です。
輸出者としてFCLを使う場合は、コンテナへの積み込み作業(バンニング)をしなければならないです。一方、輸入者としてFCLを使う場合は、コンテナ取り出作業(デバンニング)をします。
FCLのメリット
FCLのメリットは、大量の貨物を運ぶ際、荷物の量に関わらず、料金が定額であることです。つまり、貨物を積むほど、荷物当たりの送料を下げられます。
他、最終目的地までコンテナの中に貨物を詰めて輸送する為、貨物に対する損傷・盗難・紛失リスクが低い。また、港湾作業時間の短縮により、貨物を引き取るまでの時間が短いことも特徴です。
FCLのデメリット
一定量以上の荷物を輸送しないと、逆に割高になる可能性もあります。
FCLとLCL・11個の違い
以下は、FCLとLCLの主な違いです。
- 出荷量
- 最大重量
- コスト(費用)
- 輸送スピード
- セキュリティ性
- 輸入港側の費用
- 搬入日の早さ。
- 他者(他社)による影響
- 国内配送
- 分割配送
- 中国の特有の事情
1.最大出荷量
- LCL=1CBM毎。1CBM未満=1CBMと計算。200KG以下は、航空輸送の方が良い。
- FCL=コンテナスペースによる。(20フィート=30CBM、40フィート=65CBM、40HQ=75CBM)
2.最大重量
- LCL=1CBM当たり1000KG
- FCL=コンテナ毎に異なる。 20フィート21トン前後、40&40HQ=26トン前後
最大重量は、輸入国側、輸出国側の国内道路の法律にも準拠する必要がある為、注意が必要です。
例えば、日本では、総重量が18トンを超える20フィートコンテナを国内輸送する場合に三軸シャーシを使わなければならないとされています。
3.コスト(海上輸送費)
- LCL=13CBM前後未満のコストが安い。輸入港側の費用はFCLよりも高い。
- FCL=13CMBを超えるとコスト効果を得やすい。輸入港側の費用はLCLよりも安い。
但し、輸入港側の費用も検討する必要があります。
4.コスト(輸入港側の費用)
- LCL=CBM単位で課金される。特にCFSチャージが高い。
- FCL=コンテナ毎の定額。一定の荷物を運ぶ場合は、コンテナの方が圧倒的に安い。
コストは、海上運賃(国際輸送部分)の他、輸入港側でかかる費用も考えましょう。一般的にLCL輸送は、CFSチャージに代表される港側の費用が割高です。したがって、一定以上の荷物を輸送する場合は、多少少なくてもFCLで運んだ方が有利なケースがあります。
*又は、航空輸送で運んだ方がコスト的にメリットが高い場合も多いです。
5.スピード
- LCL=港にてデバンニング作業があるため、FCLよりも遅い。
- FCL=コンテナのまま国内輸送するのでLCLよりも早い。
LCLは、輸入港到着後、デバン作業(コンテナ取り出し作業)が行われます。したがって、FCLよりも引き取りまでの時間が長くなります。
6.セキュリティ
- LCL=積み替え作業、デバンニング作業の際、貨物が向き合出しになるため、損傷、盗難などのリスクがある。
- FCL=基本的に最終目的地までコンテナ内で保護される。
LCLは、荷主以外の第三者(港湾作業者)がコンテナから荷物を取り出すため(デバン等)、破損リスク、盗難リスク等がFCLよりも高いです。FCL=最終目的地まで開封されずに輸送されるため
7.搬入日
- LCL=入港日の翌々日
- FCL=入港日の当日又は、翌日
搬入日は、港湾作業者が専用システム(ナックス)に貨物を搬入したことを通知する日です。荷主は、搬入が完了した事+税関許可を受けていることの2つの条件を満たすと貨物を引き取れます。したがって搬入日がいつになるのかは、非常に重要です。
8.他者(他社)による影響
- LCL=デバン作業の際、荷主と書類が一致せず、中々、搬入されないときがある。
- FCL=コンテナは単一荷主なので、他者の影響を受けない。
LCL貨物は、輸入港到着後にデバン作業があります。作業員は、デバン作業後、書類と貨物の内容を点検し、全ての貨物の確認が完了すると、搬入完了の通知を出します。この確認作業のときに、書類と貨物内容(ケースマーク)が一致しない貨物があると、その影響が全体にいきます。
例えば、あるコンテナをデバンし、5つの荷主の貨物があるとしましょう。
A、B、C、D、E
この内、Bさんの貨物について書類と貨物の一致が確認できないと、その影響がA、B、D、Eさんにも及びます。(搬入を上げれない為)
9.国内配送
- LCL=港でデバン作業が行われるため、受け取り側でそのまま貨物を受け取れる。
- FCL=コンテナのまま到着するので、自らがデバン作業しなければならない。
輸入許可後のデバン作業への対応ができるか?も決定的な違いです。
自らの費用と責任でデバン作業ができない場合は、LCLでの輸送が最適です。もし、できるならFCLでの輸送です。なお、デバン作業は、必ず自社内の敷地であること、デバンスタッフを確保する必要があること、制限時間があることを理解しておく必要があります。
10.分割配送への柔軟性
- LCL=港でデバン作業をするため、港にて配送先毎にトラック手配ができる。(振り分け)
- FCL=分割配送も可能。但し、港にて別途、デバン作業&トラック手配が必要
11.中国の特有の事情
- LCL=長期連休前は、LCLの方がスペースを取りやすい。
- FCL=輸送需要が高くなる時期は、LCLよりもスペースを確保し難い。
FCLとLCLの分岐点 結局、何を基準にする?
FCLとLCLを決める際、何を基準にすればいいのでしょうか? この答えは、非常に難しいです。ケース毎に大きく異なります。以下は、いくつかの判断ポイントをご紹介します。
物量による決定
物量の目安は、13M3を超えるのか?で判断します。
- 2~13M3以下は、LCL
- 超える場合は、FCL
但し、状況によっては、13M3以下でもFCLの方が恩恵を受けることもあります。
コストによる決定
比較的、物量が少ない場合(例:1M3以下)は、LCLの方がメリットがあります。但し。IM3以下でもさらに少量(例:200KG以下)は、航空輸送の方が最適なケースもあります。
迅速性による決定
貨物を早く受け取りたい場合は、FCLです。少し遅くても良ければ、LCLです。
リスクによる決定
貨物のリスクを少しでも小さくしたい場合は、FCLを選びます。
【商品別】海上コンテナ輸送ガイド 最適な輸送船、梱包方法と輸送上の注意点
相談はフォワーダーへ
もし、FCLかLCLの判断が難しい場合は、輸送専門業者であるフォワーダーに相談をしましょう。フォワーダーであれば、輸送希望に応じて最適な方式を助言してくれます!
まとめ
FCLとLCLの違いを理解し、自分の輸送ニーズに最適な方法を選ぶことが重要です。貨物の量、コスト、スケジュール、価値などを考慮して、最適な輸送方法を選択しましょう。