国際輸送では、貨物の品質維持が極めて重要です。特に、温度や湿度の変化に影響を受けやすい食品、医薬品、精密機器などの貨物では、適切な環境を維持することが不可欠となります。そこで活躍するのがデータロガーです。
データロガーは、輸送中の温度、湿度、衝撃、振動、位置情報などを記録し、貨物が適切な条件下で輸送されているかを検証するための機器です。本記事では、国際輸送におけるデータロガーの重要性と活用ポイントを解説します。
国際輸送におけるデータロガーの役割
データロガーの主な種類と機能
データロガーにはさまざまな種類があり、輸送する貨物の性質や管理すべき要素に応じて適切なものを選ぶ必要があります。
温度・湿度ロガー
温度・湿度データロガーは、冷蔵・冷凍輸送や高温に弱い貨物の管理に適しています。温度範囲は製品ごとに異なります。特に医薬品やバイオ製品などの輸送には、厳密な温度管理が求められます。湿度管理が重要な貨物では、湿度センサーを搭載したロガーを使用し、カビや腐食を防ぐことができます。
衝撃・振動データロガー
衝撃・振動データロガーは、精密機器やガラス製品など、衝撃による破損リスクがある貨物の監視に利用されます。特に、海上輸送や長距離トラック輸送では、コンテナや荷台の揺れが貨物に影響を与えることがあるため、輸送中の衝撃データを記録し、貨物の安全性を確認することが求められます。
GPS搭載データロガー
GPS搭載データロガーは、リアルタイムで貨物の位置情報を取得できるため、高価な貨物や盗難リスクのある貨物の監視に適しています。航空輸送や国境を越える輸送では、貨物の追跡が難しくなることがありますが、GPSロガーを活用することで、輸送ルートの管理や輸送遅延のリスクを低くできます。
QRロガー
QRロガーは、QRコードを利用してデータを簡単に取得できる最新技術です。ロガーに表示されるQRコードをスマートフォンやタブレットでスキャンするだけで、温度や湿度などの測定データを確認できます。特に、リアルタイムでのデータ取得が必要な場合や、短期間での利用が多い事業者にとって魅力的な選択肢です。
データロガーの導入メリット
データロガーを活用することで、国際輸送における貨物品質の可視化と管理が可能になります。輸送中に異常が発生した場合、その原因を特定し、迅速な対応を取ることができるため、品質トラブルのリスクを最小限に抑えられます。
輸送中のデータを記録することで、貨物の温度変化や衝撃の有無を詳細に分析でき、最適な輸送条件の確立が可能となります。
例えば、医薬品の輸送では、一定温度以下で輸送されなければならない場合があり、データロガーを使用することで、温度逸脱がなかったことを証明できます。
保険請求やクレーム対応の面でも、データロガーの記録データは有効です。万が一、輸送中に貨物が損傷した場合、データを活用して輸送会社や保険会社に状況を説明する証拠として利用できます。輸送中のリスク管理を徹底することで、信頼性の高い国際物流を実現できます。
データロガーの活用事例
食品輸送
食品輸送では、冷凍食品や生鮮品の品質維持が不可欠です。冷蔵コンテナやリーファーコンテナに温度データロガーを設置し、輸送中の温度変動を記録することで、適切な温度管理が行われていたかを確認できます。特に、長距離輸送では、複数の輸送業者を経由することがあるため、各区間での温度管理状況を把握することが重要になります。
医薬品輸送
医薬品輸送では、ワクチンや血液製剤などの温度管理が極めて重要です。国際的な医薬品輸送基準であるGDP(Good Distribution Practice)では、輸送中の温度モニタリングが義務付けられており、データロガーによる温度管理が不可欠となっています。
精密機器の輸送
精密機器の輸送では、振動や衝撃が製品に影響を与える可能性があります。特に、半導体や光学機器などのデリケートな製品を輸送する際には、衝撃データロガーを使用して輸送中の衝撃レベルを記録し、品質保証の一環として活用できます。
データロガーの導入方法|レンタルと購入の比較
データロガーの導入には、「レンタル」と「購入」の二つの方法があります。短期間の利用や試験的な導入を検討する場合は、レンタルが適しています。レンタルサービスでは、多種多様な機種が用意されており、1週間から数か月単位での利用が可能です。初期費用を抑えられるため、コスト面での負担が軽減されるのも利点です。
一方で、長期間にわたる運用や頻繁な使用が見込まれる場合は、購入が適しています。自社専用の機器として自由に設定や運用ができるため、継続的な使用に向いています。再利用可能なモデルも多く、長期的なコストパフォーマンスを考えると、購入の方が経済的な選択となることもあります。
データロガー導入のステップ
導入を検討する際には、まず目的と要件を明確にすることが重要です。測定したいデータ(温度、湿度、衝撃、位置情報など)を特定し、輸送環境や法規制(GDP基準、HACCP基準)を考慮して要件を整理します。その後、ニーズに合ったデータロガーを選定します。温度管理が必要な食品や医薬品には温湿度ロガー、高価な精密機器には衝撃・振動ロガーが適しています。リアルタイム監視が必要であればGPS搭載モデルやクラウド対応モデルが有効です。
設定と準備では、専用ソフトウェアやアプリを使用して測定条件を調整し、貨物の特性に応じた適切な位置に設置します。輸送中はデータロガーが環境データを自動記録し、一部のモデルではクラウドへリアルタイムでデータを送信することも可能です。輸送後はデータを回収し、解析することで、温度逸脱や衝撃の有無を確認し、品質管理やトラブル対応に活用します。データは保険請求の際の証拠資料としても有効です。
導入時の注意点
データロガーを導入する際には、適切な製品選定と運用体制の構築が重要です。輸送する貨物の種類に応じて、適切な測定項目を設定し、精度や耐久性の高いロガーを選びましょう!
データの取得や管理方法
データの取得や管理方法も考慮します。リアルタイムでデータを確認できるクラウド対応のデータロガーを導入すれば、遠隔から貨物の状態を監視することが可能になります。データの保存期間や、記録のバックアップ方法も事前に計画し、万が一のトラブルに備えることが求められます。
さらに、輸送業者や倉庫管理者と連携し、データロガーの設置位置や測定条件を事前に調整しておくことも重要です。正確なデータを取得するためには、ロガーの設置場所を慎重に決定し、輸送環境に影響されないように管理する必要があります。
参考情報:データロガーの製品例
*国際輸送119としてお勧めしているわけではございません!
- シーネットのBLEデータロガー
- Testo 184シリーズ
- Tive Solo 5G
まとめ
データロガーは、国際輸送における貨物品質の維持に不可欠なツールです。温度、湿度、衝撃、GPS情報などを記録することで、輸送中の環境を可視化し、品質管理の精度を向上させることができます。食品、医薬品、精密機器などの輸送では、適切なデータロガーを選定し、記録データを活用することで、輸送品質の向上やトラブル防止に貢献できます。
データロガーを導入する際には、貨物の特性に応じた機器の選定、測定項目の設定、データ管理体制の構築を慎重に行うことが重要です。適切な運用を行うことで、信頼性の高い国際輸送を実現し、貨物品質の保証を強化することができます。
トラブルから探す
国際輸送の見積依頼先
お役立ち資料